講談社文庫
石山本願寺攻めで摂津木津川沖に陣した織田側の嘉隆ひきいる九鬼水軍は、本願寺に米を送ろうとする村上水軍に完膚無きまでにやられる。自ら繰り出した火船でやかれ、狭い河口に追いやられた後、焙烙を打ち込まれて惨敗したのである。
信長は対策として鉄甲船の製造を命じる。しかし、本願寺に組みする毛利側はスパイを送り込み、船大工の頭領の父を殺す。五人が周囲を警戒する寝所で、皮のひもで絞め殺される、まさに密室殺人。ぬらした皮が乾くときに縮む特性を利用したものだが、犯行プロセスにやや無理があるように思った。
船大工の信用第一と信長みずからが乗りだし、この事件の犯人を当てて見せ、一段落ついたかに見えた。しかし、父と頭領が握っていた紙片の記号は解けない。時計方向にでた12の矢印、その先端に書かれた甲乙丙丁と数字を組み合わせた文字列・・・。
しかし信長はついに12方向と甲乙丙丁にかくされたいろは48文字を対応させ解読に成功する。頭領庄兵衛も殺害され、同じような記号を書いた紙片。しかも毛利側は殺害を九鬼嘉隆の仕業にみせかけ、庄兵衛をついだ唐次に鉄甲船の建造を中止させようとするが、信長はさらに裏を掻き、嘉隆を討ったと見せかけ、敵のスパイ別府千之助をおびきだして討つ。
信長を探偵とする小説と言うことでどういう書き方をするのだろう、という興味で買ってきた。歴史ミステリーとしてすぐれた作品であると思った。
・下手人は、濡れた紐がどんな致命傷になるか、よく知っておる。それゆえ、真っ先に耐えられなくなると見たのじゃ。(109p)