ハヤカワ・ミステリ文庫 DEATH FROM A TOP HAT 中村 能三 訳
真っ暗な密室の中で、ローソクが妖しくゆらめく真ん中で、神秘哲学者サバット博士が恐ろしい形相をして横たわっていた。そしてその周りには、不思議な呪文。
集まったのは心霊学者ワトラス博士、手品師タロット、霊媒マダム・ラブール、奇術師デユバロ、霊感術師ラクレール、奇術師チン・ウオン・フー、腹話術師のジョーンズ等、いづれもくせのあるものどもばかり。そして謎を解くのは警察と作者自身(マーリニという舞台名使用)、解説は広告社勤務の私ハーストという布陣。
いつのまにか消えてしまったタロットはサバット博士と同じ格好でデユバロの部屋で殺されていた。そして最後にアメリカ奇術家協会大会においてマーリニの仕組んだ罠に犯人が陥る。
動機はありふれたもので、今は名声を得たデユバロが昔の悪事を種にゆする文無しのサバット博士とタロットを殺した。
しかしタロットはかなり前に殺され(268p)、当日見物人として現れ、タクシーに乗って消えてしまったタロットは実はデユバロが変装したもの、など多くの奇術的な話しがちりばめられ、非常に興味深い作品になっている。
本格派中の本格派と呼べる作品、探偵と推理小説に関する著者の冒頭の解説、巻末の手品、あるいは推理小説におけるミス・デイレクションの話し(高木重朗)も面白い。
・探偵小説は文学あるいは独自の形態で、書くというより組み立てる、あのはめ絵の様な形式を持ち、ほとんど数学的とでも言ってよい一定の公式がある。探偵小説は読者と作者との頭脳競技で、それはそれ自身の、いわば「決闘の形式」を発展させてきた。(376p)
・消失トリック・・・・床の下に小部屋があってその中に椅子毎消えてしまう(241p)
・縄ぬけトリック・・・・縄で縛って袋の中に入れた人間が脱出
・動くタイプライター・・・・地下にある別のタイプライターと針金で結ばれていて、地下のものを叩くと、地上の物が動き出す。(243p)
・音声トリック・・・・ここではラジオを使っている。銅線の一部を切断し、蝋でつなげておく。スイッチを入れると鳴り出すが、蝋が解けるととまってしまう。(292p)
・密室脱出・・・・密室の鍵穴には目張りがしてあり、閂が下りている。ハンカチに細紐を通し、細紐を鍵穴に差し込み、外に出て紐を引っ張る、犯行発見時に一番に押しかけ閂をかけるというテクニック(155p)
・ヒューズがとぶ・・・・ソケットに差し込まれた1ペニー銅貨(72p)
・自動スイッチ・・・・催眠術をかけた者にスイッチをいれさせる。(315p)
・錠前開けの道具を飲み込む(371p)
・雪の上の消失トリック・・・・雪が降る前の犯行(時間のごまかし)
・結晶ヨードを使った指紋検出(163p)
・三つの棺の密室理論解説(169p)
・直径の錯覚(281p)
・探偵、殺人方法などの解説(9ー11p)