ハヤカワ・ポケット・ミステリー TO KILL A COCONUT 皆藤 幸蔵 訳
ヘンリ・テイベットシリーズ。妻エミーの友人マーガレットがカリブ海のタンピカ島に旅行し、そこで知り合ったジョンと結婚、アンカレッジ・インなる旅館を始めた。ところが、近くのメンバーオンリーの高級ゴルフ場で、米国上院議員オルセンがココナッツ用のなたでたたき殺された。ここまでをマーガレットの手紙と新聞記事でうまく説明している。
命をうけ、テイベットは妻と共に出かける。現地に着くとゴルフ場や町の有力者たちは容疑者のサンデイを捕らえたからさっさと証拠固めをしろとのこと、しかしサンデイはもともとアンカレッジ・インで働いており人柄がわかっていたから何かあると独自の調査を開始。
ダイヤモンドを中心とする黒人過激派の暴動があれるなか、テイベットは島が綿花栽培を開始しようとしていたこと、アメリカ綿花協同組合がこれに反対し、弁護士のヒューバーマンを通してオルセンを買収しようとしていたこと、司法省が不正を嗅ぎつけ捜査に乗り出していたことがわかる。
暴動の中、ダイヤモンドはサンデイを牢から連れ出し、娼婦のキャンデイ、切手商と称する(実は刑事)レナルズを捕らえ、山の中に閉じこめる。しかし秘密の連絡網からの連絡がなくむなしく日が過ぎる。一方レナルズ等が山中に捕らえられたらしいと知ったテイベットは司法省の調査によって危険と感じた綿花協同組合のレッドベターが中心と判断し、傍証をかためる。そして一味が山中に集まったところに攻め入って・・・。
この人の作品は「死人はスキーをしない」「死の贈物」「ブルームーン亭の秘密」などを読んだが、いずれも読者興味を引きそうな場所で事件がおき、そこにテイベット夫妻が捜査に訪れるというスタイルをとっている。場景描写が非常にうまく、読者は底に言っているような感じがし、無意識に旅へのあこがれが湧くというものだ。そう言う意味では作者は観光案内とミステリーの達人である。ミステリーの解決方法は幾分テイベットのカンに雇っているところがあり、その意味では物足りないが、楽しさと言う点では一級品。