ハヤカワ・ポケット・ミステリー THE DAIN CURSE 村上 啓夫 訳
(第一部 デイン家)
舞台はサンフランシスコ。謎の科学者エドガー・レゲット博士は、ホルステッド商会から依頼を受けた作家のオーウエン・フィッツステファンの紹介で、ダイヤモンドの着色方法を研究することになった。そのために8個のダイヤモンドを借り受けたが深夜、何者かに盗まれてしまった。コンテイネンタル探偵社の私は、保険会社から頼まれて調査する事になった。
私は旧知でもあるフィッツステファン等から一家の事情をいろいろ聞き出した。一家は博士の他、後妻のアリス、その娘ガブリエル、混血の召使い女ミニーである。程なく警察の探偵オッガーが、宝石は見つからなず、一人は殺されたものの、もう一人の犯人を見つけだした。しかし事件はそれだけでは収まらない。ガブリエルは麻薬中毒で、聖杯寺院なる怪しげなる寺院に逃げ込んだ。私は男友達エリック・コリンスンと共に助け出したが、戻るとエドガーが研究室で自分の頭を打ちぬいていた。
側に残されていた遺書から、彼の暗い過去が判明した。前妻リリー・デインを殺して、姉のアリスと結婚したこと、殺人が露見し南米の悪魔島に送られたこと、脱出し、名前を変えて成功したこと、秘密を知って脅迫した探偵に問題のダイヤモンドを渡し、盗難にあったように見せかけたこと、その探偵を殺したこと、などである。しかし私は事件関係者の目の前で、綿密な捜査をもとにアリスがリリー殺し、探偵殺しの犯人であると名指した。アリスは一部ガブリエルの犯行をほのめかしたものの自殺した。一応解決に見えたが、悲劇は終わっていなかった!
(第二部 寺院)
再びガブリエルが聖杯寺院に駈込み、最初は調子が良かったが、そのうちおかしい様子。弁護士に寺院に張り込み、様子を見てほしいと頼まれた。しかし深夜主治医が刺殺され、側で血塗れた短剣を持ったガブリエルが発見された。私は一緒に滞在しているミニーの部屋に様子を尋ねに行くが、幽霊騒ぎに悩まされる。ようようそこを脱出したとき妻を殺そうとしている聖杯寺院会長ジョゼフ・ホルドーンと対決、なんとか倒すことに成功した。
助けられた妻アーロニア・ホルドーンの話によると、「彼ら夫婦は金に困って聖杯教会なる宗教を開いた。「夫は各部屋に盗聴装置、蒸気による幽霊発生装置などを取り付け、教祖の神秘性をだすようにして成功した。ところがガブリエルに横恋慕し、犯そうとした。それを知った弁護士を、ミニーに催眠術をかけ、殺させたらしい。同時に気付いた私も殺そうとした。」ガブリエルは教会をでてエリックと結婚した。
(第三部 クエサダ)
エリック・カーターと名を変えているエリック・コリンスンからクエサダから電報を打ってきた。「すぐ来て欲しい」。ところが駆けつけると彼は崖の下で半分海に使って絶命しており、妻のガブリエルは姿を消していた。彼女のクライスラーが発見されたが、大破していた。郡長のフィーニー、代理のベン・ローリー、地方検事ののヴァーノン、執行官のデイック・コットン等と意見を交わし、ガブリエルがコリンスンを殺したのだろうと言うことになった。本当にデイン家は呪われている!
ところがフィッツステファンの元に「カーター夫人を欲しい者は1万ドル払え。」の脅迫状。どうやら夫人は誘拐されたらしい。ところがヴァーノン等はハーヴィー・ホイッドンの家を家捜しだ。しかもその直後にコットン夫人が自宅で殺された。家捜しの結果で見つけた書き付けに従い、隠れ家を訪ねると確かにハーヴィーとガブリエルがおり、抵抗したハーヴィーは射殺された。ヴァーノンはデイックに「君が妻の浮気相手のハーヴィーを陥れ、その上妻を殺した!」と叫び、逮捕する。
しかしどうも話が通らない。私が部屋でフィッツステファンと意見を交わしでいると、ジョゼフの助手トム・フィンクがやってきて、フィッツステファンに何かを渡した。「ちょっと話したい事があると言うので私が外に出ると突然の大爆発。フィッツステファンは瀕死の重傷を負った。隣の部屋でガブリエルがふるえていた。
その後私はガブリエルをクエサダの家に運び、麻薬中毒から立ち直らせようと努力をする。財産管理人になったマデイスン・アンドリウスが連れ戻しに来るが断る。アーロニア・ホルドーンマデイスンと財産奪取をたくらんでいたらしく、私の捜査を探りに来るが失敗する。最後に私は犯人をおいつめ、その口から彼の母と、ガブリエルの母方の祖父が兄妹だったことが明らかにされ、デイン家の呪いの正体が暴露され、事件の本質が判明した。ガブリエルは中毒を克服し、ついに普通の明るい娘に戻った。
事件の解明に最初から関わっていた男が犯人という筋書きである。しかし話が相当に入り組んでいてわかりにくい。こうなると謎解きと言うより、誰に犯人を振り分けるか、というゲームの様にも見えてくる。リアリズムと言えばそれまでだが、最後に犯人の裁判過程で分かるように犯罪を立証するのは容易でない、と感じさせ、すっきりとした読後味は残してくれない。
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