第三の女   アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 THIRD GIRL 小尾 芙佐 訳

 この作品はクリステイ76歳の時の作品で、1966年に書かれた。彼女の晩年の作品は犯人は誰か、よりも「何が起こったか。」「何が起ころうとしているか。」の記述に重点を置き、ヒントが次々と提示され、大団円で犯人が指摘され、探偵が今までのヒントをはめ絵のようにピッタリ組み合わせて見せる、という手法が取られている。大団円までの記述は冗長に感じられるが、最後に謎解きをされると、鬱積していたものが吹っ飛び、なるほどとうなってしまう。この作品も例外では無い。

 ポアロを尋ねた神経質そうな娘ノーラは「自分は誰かを殺したのかも知れない。」と言いながら、「こんなお年寄りでは・・・。」と失望して見せ、ポアロを憤慨させて帰ってしまう。調べて見ると、彼女は、金融界の大立て者アンドリュウ・レスタリックの娘で、今は家出してロンドンのアパートにボーイフレンドのデイビッド、アンドリュウの秘書ホランドと一緒に住んでいる。
 ポアロが調査を進めると、彼女が誰かを殺したのかも知れない、と考える理由は、1階上の女性が飛び降り自殺したとき、カーテンの切れ端を持っていた、母親のメアリが中毒に陥った時、薬瓶が机の中に入っていた等という物で、不思議に犯行時の記憶は無かった。
 彼女の父親は、20年も前に家を飛び出しアフリカ、南アメリカ等を放浪していた。好きだった母親は亡くなった。父親は帰ってきたが、メアリなる女性と再婚、彼女はメアリが嫌いだった。そして鬘の謎・・・・。
 ようやくポアロが真実に肉薄した頃、精神病院に預けていたノーラが脱走、ホランドと忙しい室内装飾家フランシスがアパートに駆けつけると、デイビッドが刺し殺され、ノーラがナイフを持って立っていた。
 「ね、彼女は精神異常なんです。」と父親のアンドリュウ。しかし、ポアロは「ノーラは正常です。彼女は犯人ではありません。アンドリュウはアフリカで死んだのです。あなたが犯人でアンドリュウに成りすましてやってきて、仲間の女と結婚を装ったのです。仲間の女は、鬘を換えればフランシスなのです。」

・こうした巨大な高層ビルから用ありげに出てくる人々を眺めていると人間とは奇妙なものよ・・・蟻塚にそっくりだと思われるのだ。(86p)
・我は何を知るや?我は何を望みうるや?我は何をなすべきや?(225p)

r991007