騙し絵の檻      ジル・マゴーン

創元推理文庫  THE STALKING HORSE 中村 有希訳

原題は「忍び馬」とでも訳そうか。獲物にそっと近づく馬のこと。1987年の作品。

ビル・ホルトは同属会社グレンホルトの有力な後継者と目されていた。幼馴染アリソン・ブライアントとは将来結婚すると見られていた。しかし彼女は現会長のボブ・ブライアントと一緒になり、彼はウエンデイと結婚した。ところがあるときアリソンが、何者かに殺害された。しばらくして彼は突然アリソン殺害容疑に加え、2週間後事件のてがかりをつかんだらしい私立探偵も計画的に殺した、として逮捕された。

「被告は良心の呵責もなく、情け容赦もなくたやすく人の命を奪った・・・・。」

状況証拠は完璧で抗弁のしようもなかったが、彼は無実であった。

16年後、仮釈放を認められたビルは復讐を誓い、その足でグレンホルト社に乗り込む。

「おれは誰も殺していない。無実の罪で16年も投獄された。おれは真犯人を突き止めて見せる。全員の助けがほしい。犯人はこの中にいる。自分が無実なら協力できるはずだ。」

自分を陥れたのは誰だったのか。美貌の新聞記者ジャン・ウエントワースの協力を得ながら地道な捜査が始まる。調べてゆくうちに全員が動機は持っていたように見える、しかし全員がアリバイがあるようにも見える・・・。

最後はアガサ・クリステイ作品よろしく再びグレンホルト社に現れ、真犯人を突き止めて見せるのだが、その犯人追求方法は消去法である。主人公の長広舌もそのための布石と言うところか。殺害方法は鉄棒の一撃、ということで新味はない。その辺がややものたりなく感じた。