ハヤカワ・ポケット・ミステリ IT'S MURDER WITH DOVER 乾 信一郎 訳
若い男がが駅に向かう途中、撲殺された。州警察部長のビンガム氏はこの程度のつまらぬ事件は地元の警察で解決出来ると確信している。しかし、この機会に観光用にも使われている自分の屋敷を宣伝しようと考えているベルツア邸のクラウチ郷は「ロンドン警視庁をよびたまえ・・・。」ところが忙しいロンドン警視庁、史上最悪の警官ドーヴァー主任警部と若いマグレガー部長刑事をよこした。
殺されたのはクラウチ郷の家政婦の甥で、ベルツア邸会計係ケーリーである。近いうちに出来るモーテルを任される予定で、執事のテイフィンの娘と婚約をかわしたばかり。
ドーヴァー警部はどたばた騒ぎのうちに婚約者、テイフィン、クラウチ郷、モーテルが出来ると商売に差し障るブル・リボーン旅館の主人、競馬のかけやのオサリバン、調停屋のジョシと次々容疑者を独特のカンをたよりにあげるが、決め手がない。
田舎の生活にもあき、州警察の評判もすっかり落ちた頃、ゲーリーの父がテイフィンである事が分かる。つまり異母兄妹の結婚と言うことになり、その時間教会で牧師の話を聞いていたというアリバイが崩れ、テイフィンが犯人とわかる。
犯行の動機、犯人追及のプロセスが手軽すぎるように思った。(テイフィンが犯人の物的証拠はとても十分とはいえない。)またこの作品はことさらにドーヴァー警部の馬鹿さ加減を強調しすぎているようで、さながら「ドーヴァー君と撲殺」漫談と言った趣。ただ、丁寧な会話と物語性の重視は感心し、読み終わった後、登場人物の印象がそれなりに強く残るところは、作者の筆力の確かさと言えよう。
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