創元推理文庫 CASTLE SKULL 宇野 利泰 訳
ローレライで名高いライン河河畔にそそりたつ、不気味な髑髏城。先の持ち主で稀代の魔術師メイルジャアは、この城に大改造を施したが、17年前、腐乱した変死体となって発見された。そして後を継いだ持ち主マイロン・アリソンは、対岸の別荘に住んでいたが、全身を火に包まれて城壁から転落し、死亡した。彼女の友人でベルギーの大富豪ジェローム・ドオネイの依頼により、パンコランは、ジェフと共に捜査を開始するが、場所柄ベルリン警察主任アルンハイム男爵が登場し、両者で真相解明を争うことになる。
不思議なことに事件当日、アリソンが向こう岸にどうやってわたったか分からない。確認されたボート等に乗った形跡はない。そして城では番人らしい男の死体が発見される。パンコラン等はついに別荘と城を結ぶ秘密の通路を発見。
関係者を城にあつめて開かれたパーテイの席上、アルンハイム男爵が真実を暴露する。「メイルジャーは、17年間髑髏城に演技をくさされたアリソンと財産ほしさのドオネイによって幽閉されていた。アリソンは、昔からローマ皇帝ネロの暴虐を描いた劇を舞台にかけ、自分は主人公の火刑にかかるキリスト教徒を演じることを願っていた。逃げ出したメイルジャーは、彼女を襲い、望み通りの形で処刑した。彼は実はドオネイもすでに殺している。」と発表、得意満面である。
しかしパンコランは共犯者がいなければ出来ない事を確信していた・・・・。
ライン河の地下を通る秘密の抜け道など15世紀の土木技術ではとても無理、17年も幽閉されたまま誰にも気がつかれず生かしておくことなど無理・・・と、まあ、現実的に考えれば非常に無理があると言えよう。しかし物語の筋が波乱曲折に富み、とびきり怪奇な謎にせまる趣向はとにかく面白い。
・人の世の浮沈という奴は、かりそめの言葉一つで、抜き差しならぬ位の影響を受けるものだ。何の気なしに漏らされた言葉が、思いも寄らぬ猛毒を残すことがある。忘れられた頃のなって、その毒が吹き出して、相手もおのれも滅ぼし尽くすのだ。(277p)
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