ハヤカワ文庫
石に鳥を描く不思議な男に河原で出会った青年は、まどろむ内に鳥と男たちに関する六つの夢を見ると言う設定で、実際は短編集である。
ロマンを感じさせる文章である。格別大げさな表現を使ったり、プロットにこっていたり、謎に満ち満ちていたり、ヒーローが大活躍する、という訳ではない。なんのてらいもなく、鳥と男たちにまつわる物語をたんたんと語っている、と言う感じ。描写は正確で話の進め方に無理が無く、作者の奥深い経験と知識を感じさせ、読者に自分もああいう風になりたいと思わせる魅力がある。
第一話 望遠
若者は崖の上に映画用に、日の出の瞬間を重ね撮影するよう先輩たちに命じられ、一晩待った。ところが撮影直前、レンズからいるはずのないシベリア・オオハシシギが映った。思わずカメラを移動し、焦点を合わせて撮りまくった。
第二話 パッセンジャー
キジバトをおって森の中に入ったサムは雲霞のごとく沢山の鳩の群に遭遇する。夢中で撃ち落とす内サムの村と対立する隣村の連中が鳩に襲いかかった。サムは穴の中に隠れて時を過ごし、家に逃げ帰ったが捕った鳩は一羽を残して無くなっていた。しかしそれはキジバトとは違っていた。
第三話 密漁志願
私は女房に食わせてもらっている隠退男、いつも森に行ってコガモを狙うが捕まらない。ところがその孤児の少年はパチンコや紐で器用に捕まえる。弟子入りして教えてもらううち近くの金持ちの庭に大量に生息している鴨を狙うことになった。ラジコンで庭の池を偵察、その出口をみつけ、機会仕掛けの鴨を庭の池に送りこみ、鴨たちを追い出し、一網打尽。
・なおさら男たちを熱中させるのが密猟である。獲る、奪うという男の本能的な欲望を満たすものは、狩りにも戦いにもある。だが密猟には、さらに盗むという至上の愉悦が加わる。
(102P)
第四話 ホイッパーウイル
太平洋戦争の頃日本人のケンは各地で連合国側のために戦った。ある時地元の刑務所を脱走した四人を追うことになった。最後に残ったのはダムで故郷を失ったインデイアンの酋長。発見した時彼は盗んだハモニカを引いていた。もの悲しいメロデイだった。
・さそりと蛙の話「これが俺のキャラクターなんだ。」(253P)
第五話 波の枕
もう五十年も前の話だ。遠洋航海に出た船が火災になり、源三は木ぎれに捕まって海をさまようことになった。源三は紀州で大きな小屋に傷ついた鳥を集めて治療していた。そこに何時の頃かユキという少女が現れ、助けてくれるようになった。彼女の事を考えたとき源三は急に生きる勇気が湧いてきた。
第六話 デコイと文太
私は鳥を捕るときに囮に使われる木製のデコイ、打ち捨てられていたが文太という少年に拾われ、きれいに色を塗られて可愛がられるようになった。ところがある日、観覧車の一番上に閉じこめられてしまった。文太はどうやって外界の人に知らせるか悩む。私をガラスにぶつけて穴を作り、風船を飛ばして・・・。
990610