ハヤカワ・ポケット・ミステリー THE MURDER ON THE LINKS 田村 隆一 訳
ポアロの元に、フランスに住む南米の富豪ポール・ルノール氏から一通の手紙が来た。生命の危険にさらされている、すぐ来て呉れと・・・・。しかし、ヘイステイングスを伴って駆けつけた時はすでに遅く、富豪は、前夜何者かに、隣接するゴルフ場で背中にペーパーナイフを刺され、殺されていた。猿轡をかまされ、縛られていた夫人の話によれば、正体不明の二人組みの男に襲われた。この事件は、ポアロに何年か前フランスでおきたペロルデイ夫人が恋人コンノーのために夫を同じように刺し殺し、無罪を主張した事件を思い起こさせた。
事件は狂言で、犯人はルノール夫人なのか、それとも前夜サンチャゴに出かけたといいながら、実は残っていた息子のジャック・ルノールなのか。しかもルノール氏は隣邸のドーブルーユ夫人と密会を続けるなど艶聞も華やか・・・・。これにヘイステイングスとシンデレラの恋、ジャック、ドーブルーユ夫人の娘マルト、アクロバットの芸人ベラ(コンノーの娘)の三角関係がからみ、事件は複雑怪奇。そして第二の殺人が起る・・・・。
種を明かすと、ルノール氏は、コンノーのなりすまし、ドーブルーユ夫人は、ベロルデイ夫人のなりすまし、ルノール氏はドーブルーユ夫人に強請られていたが嫌気がさし、代わりの遺体を用意して、ベロルデイ事件と同じやり方で、逃亡しようと考えた。そんな訳でルノール氏は、ジャックのマルトとの結婚に大反対していた。ところが、反対されてマルトは、いっそ、ルノール氏がいなければめでたくジャックと結婚し、遺産が入るだろうと考えて、この計画の裏をかこうと考えた・・・・・・。非常に面白い小説なのだが、ここまで逆転、逆転が繰り返されるとなんとなくドタバタ調の感じがしなくもない。
なりすまし以外にも、腕時計を粉砕して犯行時刻をごまかそうとする話(113P)、てんかんによる死体にナイフを刺し殺されたように見せかける、互いに相手が犯人と信じ、それをかばおうと妙な証言を繰り返す(ジャックとベラ)、クロロホルムとモルヒネによるショック死の偽装(237P)など、個々に面白い話は沢山ちりばめられているのだけれど・・・。
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