新潮文庫 THE GREEN MILE 白石 朗 訳
私は1932年頃アメリカ南部の元コールドマウンテン刑務所のEブロック看守主任であった。この刑務所で死刑囚が電気椅子(オールドスパーキー)にたどり着くまでの道は、床が緑色のリノリウムであったことからグリーンマイルと呼ばれていた。
1ふたりの少女の死
私は今老人ホームでそのころの回想記を書いている。
一巻はこれから起こる事件の主役たちの紹介が主として行われている。ブロック看守が4人いるのだが、そのうち、パーシー・ウエットモアはやたらに暴力を振るい、学ぼうと言う姿勢が無く厄介者だった。しかし州知事の遠縁に当たり、なにかあるとそちらから言って来るから始末が悪い。黒人死刑囚ジョン・コーフィが連れてこられた。大男で大人しく見えたが、彼の犯罪を知るとぞっとする。クラウス・レタリックという綿花農場主が二人の娘をある夜外に寝かせたが、朝になってみるといない。血の跡を追って行くとコーフィが血だらけになって死んだ二人の少女を抱えてうめき声を上げていたというのだ。その年の暮れ、妙な鼠があらわれてもう一人のフランス系死刑囚ドラクロアに妙になついた。
2死刑囚と鼠
ドラクロアもこの鼠が非常に気に入り、ジングルスと名付け、模範囚のトウート=トウートから葉巻の空き箱を買ってそれに住まわせるようにした。別のブロックのビターバックの死刑執行が行われた。私は尿道の病気で悩んでいた。上司のムーアズは脳腫瘍と医者に宣告されひどく落ち込んでいた。ウイリアム・ウオートンという非常に暴力的な死刑囚が預けられたが、急に暴れ出し看守のデイーンを押さえ込んだ。死刑囚はもうこれ以上悪い刑罰を与えられる心配がないと凶暴になる者がおり怖い。
3コーフィの手
私の尿道感染症を、なんとコーフィの手が、なおしてくれた。奇跡だった。私はコーフィはあの二人の少女を殺していないと考えはじめ、各所に問い合わせるが、もう決まったことでもあり、反応は鈍い。ウオーリーがまた暴れて拘禁衣を無理矢理着せた。所長から妻のメリンダの病気の悪いことをしらされる。ふとしたことでパーシーがウオーリーに捕まり、苦しむが、そのとき漏らしてしまったことで日頃いじめているドラクロアに思い切り笑われる。ドラクロアの死刑執行が明日にせまった。ドラクロアは玉転がしをするジングルスの行く末を案じていた。ところがふとした隙に、ジングルスをパーシーが思い切り踏んづけた。
4ドラクロアの悲惨な死
私はパーシーにそっくりなブラッドの暴力を恐れながらこの手記を書き続けていたが、エレインが、彼を追っ払ってくれた。ジングルスをコーフィに渡すと元気になった。いよいよ死刑執行で、担当はパ−シー、ところが彼はドラクロアにかぶせる帽子の下にしく海綿を乾燥した物と変えておいた。普通、海綿は電気の通りを良くするために塩水にひたしておくものなのだ。ドラクロアは文字通り焼けこげて死んでしまった。私はメリンダを治すために、コーフィの力を借りられないかと考えた。しかし、彼を連れ出し、発覚したら、全員首だ。
5夜の果てへの旅
ハリー、デイーン、ブルータスと相談した。ドラクロアにひどいことをしたパーシーに拘禁衣を無理矢理着せ、閉所に放り込んだ。ウオーリーにモルヒネ入りコーラを飲ませ、眠らせた。デイーンを残し、三人で出かけ、疑うムーアズ所長を説得する。コーフィーはなにやらメリンダから吸い取り、彼女は元気を回復する。メリンダはコーフィーに銀のペンダントを与える。
6闇の彼方へ
刑務所に戻り、パーシーの拘禁衣を解いてやると、鬱憤を晴らそうとコーフィを殴りつける。ところが逆に捕らえられて、コーフィーがメリンダから吸い取った物を吹き込まれてしまう。ふたたびよろよろと立ち上がったパーシーは、今度は返してもらった銃でウオーリーを射殺してしまった。あの二少女殺しがウオーリーだったこと、コーフィーはそれを発見し治そうとしたのだったが、失敗したことがはっきりした。そして今、コーフィーはパーシーの力を利用してウオーリーを殺させたのだ。
コーフィーの死刑は、今となってはそれぞれの立場があって、覆す訳には行かない。そこで脱出させようかと考え、コーフィーに尋ねるが彼は死を望んだ。コーフィーは今も私の中で生き続け、私は時折、彼や交通事故で死んだ妻の夢を見、そしてこれからを考える。
この作品は売るために一巻のボリュームをうすくし、6巻にしてある。推理小説として見ると警察の捜査がいい加減すぎる、コーフィーの魔力が全く説明されていないなど論理として不完全な面が目立つ。しかし、一方で鼠の話し、ドラクロアの話し、所長の妻メリンダを助ける話しなど人間性に強く訴えるところが目立ち、老人の気持ちや、登場人物の性格分けもうまくかけており、何とも言えない魅力のある作品となっている。
・人間は皆サーカスの鼠なのかも知れない。(4ー117p)
・ただしあの男は「あなた方の黒人」という言い方をしていた。まるで、黒人が私有財産であるかのように・・・それでいて、自分の私有財産では無いかのように。(5ー30p)
・この世界には善なるものが存在するし、そのすべては慈愛に満ちた神を源泉として、世界のあちらこちらに流れている、と私は信じている。(5ー117p)
・あの男は二人の愛を利用して、ふたりを殺したんだ・・・・毎日毎日、そんなことばっかりだ・・・世界中でね。(6ー151p)
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