白昼の悪魔   アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 EVIL UNDER THE SUN 鳴海 四郎 訳

 スマグラーズ島は潮がひければ町と陸続きになる小島、古めかしいホテルが1件建ち、平和で静かな絶好の避暑地となっている。客は名探偵ポアロを始めとし、彼が気に入っている美人のロザモンド、マーシャル一家、レッドファン夫妻、ガードナー夫妻、退役少佐のバリー、嫌われもののブラットなどだ。マーシャル夫人は女優で、男を引き付ける魅力を持っており、さっそくパトリック氏と熱い中、夫人が一人妬いている様子。
 そんな中、パトリック氏とブルースター嬢とボートで島西側のビクシー湾に出かけたところ、扼殺されたマーシャル夫人が転がっていた。ブルースター嬢があわててホテルに戻り、ポアロや医者と連絡、大事件となった。マーシャル夫人はパトリック夫人、マーシャル嬢等誰からも嫌われていたようで、同情するものはあまりいないのだが・・・・。
 湾の奥にある洞窟から麻薬が発見され、麻薬密輸にからんだ犯罪ではないか、牧師が精神病院に入ってた事が分かり、その犯行ではないか、夫人は膨大な遺産を譲り受けていたから、それをねらった夫の犯行ではないか、などいろいろの説が流れる。
 細かい証拠を固めているさなか、マーシャル嬢が自殺を図り、ポアロはついに一同を集め、なぞ解き解説を行う。
(1)犯人は恋仲のマーシャル夫人をビクシー湾でのデートに誘う。その際、声をかけるまで洞窟の中に潜んでいるように言う。
(2)犯人とブルースター嬢の到着にあわせ、共犯者(犯人の妻)がマーシャル嬢に変装し、浜に倒れている。
(3)犯人が「殺されている!」と、驚いて見せ、ブルースター嬢に医者やポアロを呼びに行かせる。
(4)犯人氏は洞窟内のマーシャル夫人を扼殺、浜におく。
(5)共犯者は急いでホテルに戻り、変装を解き、何食わぬ顔でテニスに加わる。

 死体発見後に犯行を犯す、というアリバイトリックがメインである。動機は犯人がマーシャル夫人の財産をだましとろうと近づき成功したが、そろそろ用済みになったので、犯人の妻と協力して殺害した、というもの。

 クリステイの他の小説のように、最初に場と人物の紹介に3分の1くらいを要しており、テーマも殺人一つで絞られているから、わかりやすい。また殺人を犯す可能性のある人物とそうでない人物を分類し、犯人像にせまる手法、扼殺は殺人を楽しむ心のあるものという考え方も良いと思う。マーシャル嬢が蝋で人形を作り、釘を撃って呪い殺そうとしたという話も面白い。ただ麻薬事件のなぞ解きは中途半端で終わっている。

r991007