創元推理文庫 OLD WAYS IN THE NEW WORLD 浅倉 久志 訳
いちばん長身の者でも150センチくらい、一人の女性は臨月、37人のカンダ・ガイ族は思い思いの民族衣装をつけ、飛行場におりたつと焚き火をたき、車座になり、マリファナらしきものを吸出した。彼らの携行品が問題、ご先祖の魂が宿ると言うわけの分からぬカブト虫をはじめ輸入禁制品ばかり。
そのほかにも槍投げ人だの、首狩り人だの、漁師だの、狩人だの沢山、何しろアメリカ200年祭でアメリカ人の優越感をそそるため1500人も招くことにしたのだから。担当のヘンリー・スクラッグスは奮闘これ勤めざるをえない・・・・。
話は9ヶ月前にさかのぼる。民族研究部の美女の魅力に鼻の下を長くしたヘンリーはスミソニアン博物館が企画するこの一大イベント「民族フェステイバル」の企画を買って出る。
しかしこれが首都ワシントンをパニックに陥れた歴史的事件の第一歩になり、その騒ぎのすべてが彼の責任になろうとは・・・・。
さてカンダ・ガイ族の持ち込んだカブト虫は衣服を食い尽くす虫だった。手始めに虫たちは博物館に飾ってある婦人たちの彫像のペテイコートをかじりつくしてしまった。虫たちはポトマック河畔を越えて街に出た。スーパーの衣料品売り場の衣服が消えた。街路ではしばしば裸体の男女が見られるようになり、自動車事故が多発した・・・。
相前後して黒人大男でタウポ族の王子と言われるセドリック・マフーテがいなくなった。カンダ・ガイ族の女性が出産し、世継ぎの王子を産んだ。一族は盛大なフェステイバルを催すが、彼らの食っている肉を調べて驚いた。マフーテの冷凍肉!。それにしてもあの大きなマフーテはどのようにして殺され、冷凍されたのだろうか。
虫たちは異常繁殖を続け、やがて北米一帯に広がるかと恐れられた。とめどもなく続くドタバタ劇の行き着く先は?ヘンリーは捕らえられた。捕らえられている間中、ヘンリーはカブト虫の特性を考えていた・・・・。
ヘンリー・スクラッグスシリーズ第三弾。爆笑スラップステイックとしては評価できるものの推理小説的な華麗さはない。わずかに猛獣捕獲に用いられる硫酸ニコチンを使った一瞬の麻酔術が目を引く。原題は「新世界における古いやり方」で文明を高度に発展させたアメリカにとんでもない未開の一族が乗り込んだ、そのときの文化摩擦といった意味か。
031215