ハヤカワ・ミステリ文庫 THAT NIGHT IT RAINED 吉田 誠一 訳
アメリカ警察小説の傑作である。事件自体は実際にありそうな、単純なのだが、その謎解きと、主犯の確定まで丁寧に記述しているところが特徴。
ソレンスキー氏のもとに雨の降っている夜、重そうなオーバーを着、古ぼけた黒のフェルト帽をまぶかにかぶった天神髭の老人が二度も訪れ「ロベンズの家はどこだ。肥料代を五十ドル貸してある。」と聞く。夜中になり、ロベンズの妻マータが「夫(ヴィック)が撃たれた。」とソレンスキーのもとに駆け込んでくる。ヴィックは、その見知らぬ男にいきなり四十五口径マグナム弾で撃たれ死亡したのだ。
手がかりのない事件だったが、聞き込みにより、肥料商ロベンズがマータの色気を利用して納屋を連れ込み宿のようにし、自分の兄等に貸していたことが分かる。そのうちに警察は、機械修理の青年ボラックの妙なアリバイに気がつく。映画を見た後、レストランでアイスクリーム付き炒り卵を注文した。自分を無理に印象ずけようとしている!警察が伝票を元に調べると、前日だった事が分かり、逮捕される。
ボラックは「マータと関係したが、彼女から「夫に嫉妬から来る暴行を受けている。救い出して欲しい。」と頼まれ、二人であの芝居を打った。変装やアリバイ工作は、彼女の指導による。」と供述し、マータも逮捕された。一方マータはこれを全面否定する。
真相はどちらの主張が正しいか、突き止めなければならないのだが、いづれも譲らない。しかし最後にボラックの部屋から、犯行のヒントになった書籍や記述が発見される。
アリバイが崩されてしまうところ、ボラックの部屋からボラック単独犯の証拠が発見されるところはどちらも偶然すぎる嫌いがないでもないが、捜査にあたってぶつかりそうな問題点(いいかえれば、推理小説を作る上でもっとも難しいところ)に正面から取り組んでいる感じがするところがいい。田舎町の雰囲気も良く出ている。
・その動機はともかく、野次馬がやってきたことをありがたいと思った。彼は自由の彼らと交わり、自己紹介し、彼らの名前を聞き、彼らのせんさく好きな質問に常よりも気前良く答え、こちらからも探りを入れてみた。(53P)
・男の声と女の声を間違えるかいなかの実験(187P)
・だが、弁解しようと言う彼の気持ちは非難できないぜ。彼は引き金を引いたかもしれんが、銃弾同様罪がない。道具に使われたんだよ。(248P)
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