創元推理文庫 ARSENE LUPIN GENTLEMAN-CAMBRIOLEUR 石川 湧訳
リュパンシリーズの処女作で8つの短編を収めている。リュパンは神出鬼没、城館やサロンしか荒らさぬ謎の男、変装の名人であり同時に名探偵、ダンデイで敢然と悪に立ち向かうその姿はフランス人好みであるらしい。
ただ別の見方をするとあまりにもリュパンがアール・マイテイ、登場人物を描くなどは考えていない、謎ときの解説が行われていない、などで通常の推理小説を期待していると、読んでいるうちに眠くなってしまう。
なおLUPINは創元推理文庫ではリュパン、新潮文庫ではルパンになっている。
アルセーヌ・リュパンの逮捕
ぼくは、アメリカ行きの豪華客船に乗っていたが、船にアルセーヌ・リュパンがいるとの情報。さっそくジャーランド夫人の宝石が盗まれてしまった。リュパンは、消去法でロゼーヌ氏ではないか、との疑いが出るが、リュパンに襲われた。どこにリュパンは消えたのか?ところが、ガニマール氏が現れ「あなたがリュパンですね。あなたが称しているベルナール・ダンドレジー氏は3年前にマケドニアで死んでいますよ。」仕方がない、こうしてぼくことリュパンは捕まった。
獄中のアルセーヌ・リュパン
リュパンは、サンテ刑務所に収容されるが、カオルン男爵の元に「お宅にあるルーベンスやワトーの絵をいただきにあがる。」の手紙が届く。そして厳戒のなか見事に絵が消え失せてしまう。獄中から巧みな心理作戦で部下を使ったリュパンの勝利だった。
アルセーヌ・リュパンの脱走
そして裁判、いざ公判となってガニマール氏が確認すると、別人デジレ・ボードリュではないか。1ヶ月も前にすりかわったらしい。釈放されたボードリュの跡をガニマール氏がつけると、また本物に変わってしまった。「どうして裁判のときにはボードリュに見せた。」「そのくらいの変装ができなくてリュパンは勤まりませんよ。」森の中の対決では見事にやられてしまった。
奇怪な旅行者
ぼくはルーアンに向かう列車の中にいた。同じ客室には夫人が一人、ところが間際に入り込んできた男に夫人は恐怖の様子を見せる。「この列車にリュパンが乗り込んだそうです。あの男では・・・。」しかも油断している間に、私は縛り上げられ夫人は宝石を奪われた。ぼく、リュパンは、警察の協力を得てリュパンを追う!捕らえてみると男は、凶悪犯ピエール・オン・フレー、ぼくは逃げ出したが翌日の新聞がリュパンの手柄を褒め称えた事は言うまでもない。
女王の首飾り
カステイーユ宮殿のレセプションでドルー・スービーズ伯爵夫人は、あのマリーアントワネットゆかりの「女王の首飾り」をかけ、好評だった。レセプション後、ドアも窓も閂のかかった自宅小部屋においたが、翌朝見事に紛失していた。部屋は中庭に面し、反対側に住む夫人のの友人アンリエート夫人が疑われた。宝石は見つからなかったが、ドルー夫人は彼女を追い出してしまった。
それから1年おきにアンリエート夫人のもとに1000フランの現金がどこからともなく送られてくるようになった。何年かたってから、ある男が「夫人の子供が母の生活を見かねて台所の棚板をはしごにして小部屋に近づき、窓枠と窓の間の狭い部分にわれを入れ、そこから火かき棒をいれて、天窓開閉用の紐にひっかけて引き降ろし侵入した。子供は毎年宝石を一粒一粒売って金をお母さんに送ったのではないか。」と解説、やがて、首飾りがドルー夫人のもとに戻ってきた。新聞には「アルセーヌ・リュパン失われた宝石を発見、持ち主に返還。」
ハートの7
作者である私がアルセーヌ・リュパンと知り合ったいきさつを述べた作品。ある時「ラ・カスカード」で夕食を終え、我が家に戻ると手紙で「動くな、身振り一つするな、身の破滅だぞ。」カーテンの陰で誰かが私を見ている感じがし、一晩まんじりともせずにいると、翌朝賊は消えており、ハートの7のカードが1枚残されていた。そしてその意味が分かると押しかけた男の自殺。男はヴァラン弟で富豪アンデルマット氏の名刺を持っていた。
事件の概要は鉱山技師のラコンブ氏が画期的な潜水艦ハートの7を開発、図面をヴァラン兄弟経由でアンデルマット氏に譲った。そしてラコンブ氏が行方不明になった。以下ダスプリー記者の計らいでヴァラン兄とアンデルマット氏の対決が続く。国王像の剣にハートの7を押し当て、マークを一度に押すと金庫が現れるところが面白い。最後にダスプリー記者こそ、アルセーヌ・リュパンと判明する。
彷徨する死霊
リュパンがモーベルテユイの屋敷に忍び込み、様子をうかがっていると、城から黒衣の女が出てきた。女を突然大きなグレート・デーンが襲う。リュパンは犬を射殺し、ジャン・ダルシュー嬢を救う。「ヴァン・ドームに行く道端であなたがお友達あてに書いた手紙を拾ったのです。あなたを救いにきました。あなたはピストルでねらわれ、軒の切石に押しつぶされそうになり、今度は犬に殺されそうになった。だれかがあなたの命をねらっているのです。」
罠をはる。彼女を襲ってきたのは予想通り…・。
未青年が遺産を得たとき、後見人が成年に達するまで管理をする。しかし成年に達したり、あるいは結婚して独り立ちすると、後見人は財産を与えなければならない。これを防ごうとして当該未成年や婚約者の命をねらう犯罪はホームズものなどでもよく見られる。
遅かりしシャーロック・ホームズ
田舎の城チベルメニル付近ににリュパンが潜んでいるという。しかし安心、シャーロック・ホームズが城にくるという。けれども城にヴェルモンとして忍び込んでいたリュパンは、当然の事ながら先制攻撃…・。(1907
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