カリブ海の秘密   アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 A CARIBBEAN MYSTERY 永井 淳 訳

 カリブ海サントノレにある若夫婦テイムと・ケンドルとモリーが新しく始めたゴールデン・パーム・ホテルではバルグレイブ少佐が何回目かの世界各地をまわった自慢話をしていた。そして彼は、妻が首吊り自殺をしたが失敗、ところがその後様子がおかしくなり死んでしまったというような話を二件した。「しかも夫は名前は変えているが同一人物だったようだ、ほれこの写真の男だ。」と示した後、少佐は急におびえた様子を見せ話題を変えた。
 翌日少佐は不審な死をとげた。ダイフロル、ヘクサゴナル=エシルカーベンゾールとかいう聞いたこともない毒物。
 少佐は、マープル女史の肩越しに何を見たというのだろうか。かってグレゴリーの奥さんは不審な死をとげた、今の奥さんのラッキーはとかくうわさの絶えぬ人、ヒリンドン夫妻は実は仲が悪い、召し使いのジャクソンは少佐の持ち物を調べるなど怪しげな行動・・・・マープル女史が、金持ちのラフィールに助けられ、調査を開始するが遅々として進まぬ。
 そして犯人の推定をしたらしい使用人のヴィクトリアが死体で発見される。またホテルの経営をあやぶみ、モリーがノイローゼ気味、睡眠薬を飲みすぎるなどする。夫のテイムは何とかモリーを助けようとしているようだが・・・・・。
 川の中でオフェリアのようにモリーと同じ服装をしたラッキーが死んでいた。犯人が分かった。マープルは、苦しむモリーにコップの水を強引に飲ませようとしている犯人を間一髪で発見、逮捕させる。彼はなうての結婚詐欺師だった。

 犯人が結婚詐欺師としている点が外の作品と趣を異にしている。また少佐が高血圧とのうわさをながし、あたかもその薬を飲んで死んだようにみせる手口、少佐は片方が義眼であったため、実は予想とは反対の方向を見ていたのだなどという小さなひねりが聞かせてあるところも面白い。

・老人は生きることが如何に大切で興味深いものかということを知っていますわ。(188P)
・魔女たちが身体に香油を塗ったことはご存知でしょう。彼女たちはそれを塗油としょうしていました。ベラドンナやアトロピンのたぐいのものを身体に塗るわけですが、そうすると空中飛揚の幻覚が生じるのですね。(246P)
・人間は人の話をいとも簡単にしんじてしまう。(246P)

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