この町の誰かが     ヒラリー・ウオー

創元推理文庫  A DEATH IN A TOWN  法村 里絵訳

コネテイカット州クロフォード・・・・アメリカのどこにもありそうで平凡で上品な町。ところがそこで一人の女子大生が惨殺された。当初、人々は「この町のものがあんな純真無垢な女学生を殺すわけがない。ターンパイクができ、よそ者が流入するようになってきた。彼らの犯行に違いない。」と考えた。そして消えた不審な若者が取りざたされた。

しかし若者は無実と判明した。すると犯人はこの町の中にいる。何の証拠もないが怪しそうな者が取りざたされる。運動部のキャプテンをやっている黒人学生はどうか・・・・彼とその一家は結果として町をでていった。司祭があやしいのではないか。司祭は実はホモであった。そのことを恥じ、司祭は自殺して果てた。あの子を殺したのは誰か。浮かんでは消えてゆく容疑者たち。焦燥する捜査班、怒りと悲しみ、疑惑と中傷の中、事件は予測のつかない方向に発展してゆく。

迷宮入りと思われた犯罪は思わぬところから解決の糸口が見つかった。殺された女子学生の弟がコンドームを預かっていた。女子学生には男がいた!

事件のプロットはこの作者の名作「失踪当時の服装は」を思わせる。最後にこの作品を書いた人間が犯人であったという点はクリステイの「アクロイド殺人事件」を髣髴させる。しかしこの作品は全編インタビュー形式のドキュメンタリー・タッチで描かれているところが特色。読みすすむうちにアメリカ社会の問題点みたいなものが感じられる点がすばらしい。