創元推理文庫 THE VALLEY OF FEAR 阿部知二訳
私(ワトソン博士)がホームズと、ボーロックという男から送られた暗号を解いていると、マック警部が飛び込んできて「暗号文にあったとおり、バールストン荘園のダグラス氏がけさ惨殺された」と連絡。早速出かけて行く。
バールストン荘園は廃城だったが、数年前アメリカの金鉱で当てたというダグラス氏が買い取り、夫人、友人のセシル・パーカー、執事のエイムズ、家政婦等と住んでいる。夜中の11時頃銃声を聞き駆けつけるとダグラス氏が顔を散弾銃で撃たれて死んでいた。側にはV.V.の印の有るカード、銃、高窓が開いており血痕、結婚指輪が抜き取れれており、庭には犯人が乗り捨てたらしい自転車・・・・。パーカーはダグラス氏が誰かに追われているらしかったと証言し、追っ手が部屋に隠れていて、ダグラス氏を射殺、高窓から逃げたのではないか、と主張する。
しかし妙にパーカーと夫人の中がよろしい様子。その上ホームズは血痕等が偽装工作であることを見抜く。パーカー氏と夫人は何かを隠している。鉄亜鈴がなくなっていることに目をつけ「壕をもう一度さらってくれ。」と要請し、待ち伏せる。そしてついにダグラス氏が追っ手のテッド・ボールドウインなる男を殺し、死体をダグラス氏に見せ掛けていた事を暴き出した。
さて、後半。1875年、石炭と鉄鋼のヴァーミッサ峡谷へ向かう列車の中に、シカゴから来たマックマードという若い男がいた。そいつは列車の中で早くも警官に横柄な口をきき、いあわせた坑夫たちに強い印象を与えた。下宿家に落ち着いたマックマードは会計士として働く一方地元の情報に耳をすませた。
その地域はマッギンテイという悪徳市会議員を中心に天誅団の連中が暴力で仕切っていた。マックマードは彼らに挨拶に行くが、その堂々とした態度、偽金作りの技術、シカゴで悪事を働いた実績を買われてたちまち認められるようになった。新聞記者暴行など悪事にも積極的に指揮をとり、ついにナンバー2にのしあがった。
ある時マックマードは、大手資本の援助を受けたピンカートン探偵社のバーデイ・エドワースがやってくると報告する。生かして帰すな、とマッギンテイ初め主立ったメンバー7人が待ちかまえる事にした。しかし気がついたときには一味は警官隊に包囲され、マックマード自身がバーデイ・エドワースだったことを知らされる羽目になった。
一味の主要メンバーは死刑になったが、逃れたものもいた。テッド・ボールドウインもその一味だったのだ。こうしてマックマードことダグラス氏は難を逃れたが2ヶ月後南ア航路の船から何者かに突き落とされ他界した。ホームズはつぶやく。「モリアーテイの仕業だ。」モリアーテイこそは表面は善良な紳士を装いながら、悪の世界に君臨する帝王なのである。ホームズは何時の日かの打倒をちかう。
「緋色の研究」と同様に前半分で事件の概要、捜査、犯人逮捕までを書き、後半分でその事件の原因となった昔の事件を述べている。二つの物語を鎖で結んでいる、ともいえる。一つのスタイルではあるがこの形式がよいか、どうかは議論の分かれるところだろう。
991007