レーン最後の事件       エラリー・クイーン


創元推理文庫 DRULY LANE'S LAST CASE 鮎川 信夫訳

 サム探偵事務所の元に七色の髭をつけた老人が現れ、「指定期日に電話がなかったらドルリー・レーン氏立ち会いの元に開封してくれ。」と頼み、一通の封書を預けて行く。夏休みインデイアナの学校の先生を案内してブリタニック博物館を訪問したところ19人いたのに出たときは18人になっていた、という。しかもこの話はサムが娘のペーシェンスと共に、調べると先生は17人しかいないことが分かった。
 二つの事件が関係すると考え、二人がドルリー・レーン氏の口利きで一般公開中止のブリタニック博物館を訪ねると、チョート博士が迎え、英国から来て新しく館長になるセドラー博士とロー青年を紹介される。中を見物するとびっくり、ガラスケースが壊され、サクソン書庫から寄贈されたジャッガードの印刷になる1599年版のシェクスピアの「情熱の巡礼」が盗まれ、代わりに1606年版が置かれてあった。ところがしばらくすると1599年版が何者かによって返還される。なんと変わった泥棒ではないか!しかし表紙の皮が切られ、内側に何が書類が入っていたらしい痕跡!
 サムが、あの見知らぬ男のおいていった封書を開けると、サクソン書庫と書いた下に3HSwMの文字と書いた紙。レーン氏の助言で新任のセドラー博士を調べると、彼の名はシェクスピアの友人と同じな上、証言より1週間早く英国より来ており、事件がおこった頃、米国にいたことが判明する。さらにレーン氏はあの紙が博物館から出たものであること、どうやら専用紙をエール博士なる人物が持ち出した事を発見。
探偵事務所にレーン氏から3HSwMの文字の書いてある紙を持参せよとの電報。警部がいなかったので、ペーシェンスとロー青年が出かけると突然何者かに襲われ、その紙を奪われた。博物館に忍び込んだ泥棒が捕らえられ、ジョー・ヴィラと分かった。その証言から学校の先生に混じって本を盗んだのは彼で、指示したのはエール博士であると分かった。森の中の博士の家を訪ねると、博士は消えていたが、番人がいた。証言から事件のアウトラインが分かり、エール博士とセドラー博士と七色の髭の老人が同一人物らしいと判明した。よく考えるとエール博士は字を入れ替えるとセドラー!
 それから事件はしばらく立ち枯れみたいになったが、突然エール博士の家が襲われ、散々荒らされた。レーン氏は、あの文字をひっくり返すとウイリアム・シェクスピアになることから、狙われたものはウイリアム・シェクスピアの直筆と推定、もしそうとすれば世紀の大発見!エール博士が言うように100万の値打ち!
 その博士の家が、地下に仕掛けられたTNTの時限爆弾により爆破、炎上した。しかも不思議なことに犯人はこの家に直筆書類があることを知っていたはずで、するとそれを得ることでなくなくそうとしたのか。そして焼け跡から銃でうたれたエール博士らしい遺体。
やがてセドラー博士には愛書家の書庫に侵入、強盗事件を起こした双子の弟がいることが分かった。すると死んだのは兄か弟か。しかしレーン博士は色盲テストにより、誰が死んだかを決定する。さらに直筆書類がシェクスピアがセドラー博士兄弟の祖先に毒殺されたことを物語るものであることも分かった。
 エール博士宅に侵入した犯人は状況から二人いることが分かった。書類をなくそうとした兄弟の内の一人と彼に抵抗して書類を残そうとした一人。後者は分からなかったが、とうとうペーシェンスが、犯人が目覚まし時計が鳴ったにもかかわらず、とめなかった、時限爆弾の時を刻む音に気づかなかった、書斎の壁をたたいて確かめずにいきなり壊している点などに着目、悲しい推理を立てる。

 「X」、「Y」、「Z」の三悲劇に続き、ドルリー・レーンシリーズの最後を飾る作品シェクスピアの初版本に題材を取り、いわゆる探偵小説に出てきそうなトリックを縦横にちりばめている。人間消失、秘密の隠し場所、双子の兄弟、暗号解読、アナグラム、TNT爆薬による爆破、色盲、つんぼと音、探偵が犯人、エトセトラ、エトセトラ。最初はやや冗長に感じられるが途中からぐんぐん盛り上がってくる。(1934 29)
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