マギンテイ夫人は死んだ      アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 MRS McGINTY'S DEAD 田村 隆一 訳

 雑役婦のマギンテイ夫人が、自宅で撲殺された事件で、間借人のベントリイが逮捕された。金が無くなっていた上、服についた血という物証があったために、死刑が言い渡されたが、ポアロの親友スペンス警視は納得が行かず、再調査を依頼してくる。
 ポアロは、未発見の凶器発見に努力する一方、彼女の遺留品を検査したところ、「日曜の友」なるゴシップ新聞の「凶悪事件を巡って行方不明になった女主人公に関する記事と写真」が切り取られていることに気がつく。   
 第二次世界大戦を挟んでイギリス国民の戸籍が散逸し、素性の分からぬ者がいくらでもいる、と言う状況が紹介される。マギンテイ夫人は「女主人公」のうちの一人が、事件の起こった地区にいることを突き止め、おねだりをしたために殺されたのではないか。そんな観点からポアロは夫人がパートで働いてていた、下宿屋夫妻、未亡人、医者夫妻、工業会社の経営者夫妻、住人夫妻等を次々と訪問しながら、謎を一つ一つ解いて行く。
 そして未亡人ローラ・アップワードの死。現場には二つの紅茶茶碗と特徴のある香水の匂い。一つには口紅の跡がついている。しかしポアロはマギンテイ夫人殺害のおりと同様、犯人は偽装工作を行ったと見破る。そして裏に僕のお母さんと書かれた写真の発見・・・・それは行方不明になった殺人犯の一人のと駆け落ちした女の顔だった。
 富裕な工場主の娘だったローラは、昔あることで息子を亡くし、パリのバレリーナの子と称する男の子を養子として迎えた。息子は、ロビン・アップワードとして劇作家の道を歩み始めたが、たまたまお手伝いのマギンテイが写真を発見、真実を知ってしまったので口を封じた。そして写真から、真実を知ってしまったローラも偽装工作の上殺してしまった。

全体としては日常生活を通して個人の性質が良く描かれているし、その性質から犯人を推定するポアロの奮闘ぶりも面白い。しかし4人の写真がぼやけていたから、誰が誰に対応するのか分からない、というのはちょっと都合が良すぎる。ローラ殺しは彼女が金持ちで、息子は彼女が真実を知ったために財産を相続できなくなるのではないかと考えて殺してしまった点、またマダム・タッソーの蝋人形を利用した点等は説明が不十分のように思われた。

・アップワード夫人は独断的で、なかなか向こう気が強い性質です。うまく人とを言いくるめるというより意地っ張りなところがあるのですね。これは若いころのエヴァを見るとあてはまらないのです。(153p)

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