招かれざる客         アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫  THE UNEXPECTED GUEST  深町 真理子訳

 その夜、ラングラート館の周囲には濃霧が立ちこめ、ブリストル海峡の霧笛が陰気な音を響かせていた。館の書斎をヘッドライトがよぎり、見知らぬ男スタークウエッダーが窓から入ってきた。彼はそこで銃で撃たれた不具の夫リチャードと、銃を手にした妻ローラを発見する。咄嗟にローラの犯行と判断し、何とか犯罪を隠蔽してやろうと考える。リチャードに恨みを持つ者はいないかと問いただし、昔、車で幼児をはね、その父親マグレガーがひどく怨んでいたことを聞き出す。リチャードの不具になったが故に猫を撃ち殺すことが趣味というねじれた性格もここで紹介される。そこでスタークウエッダーはマグレガーの犯行に見せるため、犯行メッセージを残したり、もう一度銃を撃ったり、あるいは「見知らぬ男が逃げて行った。」と証言したりする。
 そして警察が到着し捜査の開始。警察はマグレガーの犯行と考え、傍証をえようとする。ローラはその恋人ジュリアンの犯行と考え、それが発覚しないような証言を繰り返す。一方ジュリアンはローラの犯行と考え、それが発覚しないような証言を繰り返す。どちらかの犯行と考えた従僕エンジェルは二人を強請って金を巻き上げようとする。ところが中盤になってマグレガーは既に死んでいることが判明。ローラやジュリアンも犯人にはなりえそうもない証拠が出てくる。
 リチャードの母ウオリック夫人は、いざとなったら一家のだれかの犯罪と分かったいま、自分の犯行を認める手紙をスタークウエッダーに託す・・・・。
 そして最後に看護婦のベネットがうまく誘導尋問すると異母弟のジャンが「今日からは僕がここの館の主だ。施設に行け、なんていう老いぼれじじいを殺してやった。」とわめく。そして森の中に追いつめられ銃を暴発させて死んでしまう。
 ところがオマケがつく。スタークウエッダーが証言する。「この事件はみんな犯人の可能性があるんじゃないんですか。マグレガーだって、本当に復讐を狙っていたのなら、殺された風を装って実は生き延びていたかもしれない。それで今夜濃霧の中を押し掛け、リチャードを射殺し、一度は外に出てまた舞い戻ってきたのかもしれない。スタークウエッダーなんて名前で・・・」

 聞いているとどうも結論の分からない、観客はどうでも考えられるリッドルストーリーの用に思えてくる。

・リチャードは同情されることで、自分は特別な人間だという錯覚・・・自分は特別なんだから、何でもしていいんだという錯覚を持つようになってしまったんです。(24P)

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