七つの時計          アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 THE SEVEN DIALS MYSTERY 深町 真理子 訳

 鉄鋼王オスワルド・クートが借りるケイタラム郷のチムニーズ館。ある朝、滞在していた4人の青年のうち外交官のウエイドが起きてこない。みんなは八つの置き時計を買って、からかうなどするが、気がつくと、彼はクロラールの飲み過ぎで死んでいた。そして書きかけの妹に宛てた手紙に「セブン・ダイアルズの一件は忘れてくれ。・・・・」。時計は、なぜか一つだけが庭に捨てられていた。
 そしてバンドル嬢が、車で轢いた男は、外交官のデヴァルーと判明した。彼も「セブン・ダイアルズ」「ジミーに」の言葉を最後に死んだが、死因はなんと銃殺だった。
やがてセブン・ダイアルズなる組織のの秘密の会合が、ワイヴァーン荘で行われるとわかった。バトル刑事が止めるのも聞かず、バンドル嬢が潜入、彼らがエーバーハルトの発明した鉄鋼の特殊処理技術を盗もうとしているらしいことを突き止め、銃撃戦の末、ロレーン嬢は盗まれた書類を取り返して見せた。
 セブン・ダイアルズとは一体何者なのか。行動様式から言ってオスワルド・クートこそが、その首領ではないか、外務次官でバンドル嬢に結婚を申し込んだロマックス卿ではないか、など話は右に左に。そしておそわれたバンドル嬢、外交官エヴァズレー等が最後に見たセブン・ダイアルズの首領は・・・・なんとバトル刑事その人だった。
実はセブン・ダイアルズは、バトル刑事を中心とする素人探偵団、悪玉ではなく、機密の機械技術を盗もうとする男を追っていた訳で、犯人はジミーとその恋人ロレーン嬢だった。

 「チムニーズ館の秘密」の続編といったところである。と、同時に叙述ミステリーの最高傑作の一つではないか。解説では「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」「そして誰もいなくなった」と並列の形でこの作品を並べているが、だまされたという感じを読者に持たせる点ではこれが一番優れていると思う。それはまたある意味ではバリンジャーや折原一の作品にも勝るような気がする。とにかく最後に首領がバトル刑事と知ったときの私の驚きは、並大抵じゃなかったですぞ。
 なお、クリステイ作品にはいろいろな毒物が使われており、読者を楽しませるがこの作品でもクロラールのほか、塩酸モルヒネが使われていた。これが証拠となってジミーが犯人と特定されている。