ハヤカワ文庫 THE CAT WHO SAW RED 羽田詩津子訳
「猫」シリーズは10数冊出ている。主人公は新聞記者のクイラランなるアメリカ中西部都市の新聞記者、年は46、離婚暦あり、6フィート2インチの偉丈夫ながら少々太り気味、特大の口ひげをトレードマークにし、葉巻と美女を愛するが過去のアル中の経験から酒はやらないという。一人身で二匹のシャムネコを飼っている。ココとヤムヤム、このうちココが曲者でクイラランによると「絶対勝てない。一本取ったと思っても実は向こうの方が優位に立っている。」
さて今回の作品ではクイラランは、町のレストランについてグルメ記事を書くことになり、主人が料理のうまいロバート・マウスの経営する屋敷に下宿することにした。しかしその屋敷は過去に忌まわしい事件のあった呪われた屋敷・・・・。
屋敷には主人のほか、ハウスボーイのウイリアム、マロン夫人のほか下宿人のローズマリー、ヒクシー、シャーロットの女性3人組、弁護士、レストラン・オーナーなどだった。しかし何より驚いたのは10数年前に分かれたかっての恋人で女流陶芸家のジョイ・グレアムが夫のダンと共に住んでいたことだ。しかもパーテイの様子ではどうもジョイとダンはうまくいっていないらしい。
やがてジョイが失踪する。続いてウイリアム。ダンはジョイについては前にもあった、そのうち戻るだろうと説明し、自分は特殊な釉を使った陶器を展覧会にむけて作っているという。しかし「夜間、女房が轆轤に髪を巻き込まれて大声をあげた、というがジョイは轆轤を使わぬ事が特色」、「ネズミがいるというが屋敷は駆除業者を雇ったばかり」「ジョイはマイアミに行ったというが彼女はクイラランに「フロリダは嫌い」といっていた。」など矛盾の続出・・・・真相はどうなっているのだろうか。
推理小説としてはあまり面白いとは言いがたい。推理小説の面白さはやはり意外性にあり、読者はあっと驚きたい、と願っている。そこのところが不足している。しかし猫や食物に関する記述はなかなか細かく、小説全体にアットホームな感じを与えている。
最後に酸化鉛の毒性はどのくらいなのだろうか。いつか調べてみたい。
・ 一生をアパートの中で暮らす身の上のココにとっては、芝生は貴重な楽しみだった。まだ夜露にぬれた芝生の上で、ココは芝草を一本一本綿密に調べ、猫族だけに分かる選別方法で食べる草を決めていた。(83P)
・ 行商人たちは声をからして、香料入り塩漬け果実、シャトルーデル用生地、チョコレート・トルテ、聖人たちの石膏模型、ウズラの卵。ヴードウ教の秘薬・・・・・を売っている.(161p)