ハヤカワ・ミステリ文庫 N OR M? 深町 真理子訳
トミーとタペンスもの。
トミーは、情報部からナチスの大物スパイ「NかM」の正体を突き止めるよう依頼され、南イングランドのメドウズ氏の名で無憂荘に赴く。タペンスは、おいて行かれるが、黙っている彼女ではない。電話を立ち聞きし、ブレンキンソップ夫人の名で先回りして潜入する。
何か恐ろしさを感じさせるオルーアク夫人、愛国主義者ぜんとしたブレッチリー少佐、ゴルフ好きのヘイドック海軍中佐、ドイツから亡命してきたカール青年、ミス・ミントン、ケイリー夫妻、子ずれで善良そうなスプロット夫人、無憂荘主人のペレナ夫人、その娘でカール青年に好感を抱くシーラ等が滞在客だ。トミーはグラント大佐と連絡を取りながら調査を進める。
ペレナ夫人とカール青年が怪しまれた頃、スプロット夫人の愛児ベテイが、誘拐される。幸い彼女を連れ出したポーランド女が発見され、夫人の手で射殺され、愛児は戻った。しかし、何の目的でこの誘拐事件が起きたのだろうか。その後消えるインクの発見などでカール青年が逮捕され、事件は一件落着に見えた。
それでも疑問を持つトミーが捜査を続け、偶然にヘイドック海軍中佐の元で無線機を発見、これで犯人はきまりと抜けだそうとするが、無憂荘近くでおそわれ、捕らえられる。おかしいと感じたタペンスとパブの主人アルバートが捜査を開始。アルバートが捕らえられたトミーがいびきで放つSOS信号に気がつく。タペンスは敵の罠に落ち危機一髪、しかしそこは救援がかけつけてめでたし、めでたし。なんともう一人は一番可能性の低く見えたスプロット夫人だった。
スピーデイで楽しいスパイ小説。この作品が出版されたのが1941年、折から英国はナチに攻められていた頃である。時代をうまく捕らえたものであるし、クリステイの戦争観も伺えて面白い。
・あたしが嫌いなのは、戦争につきまとうお題目なんです。あの独りよがりな・・・いやらしい、いやらしい愛国心なるものなんです。(82P)
・愛国心だけでは十分ではありません。敵に対して憎悪の念を抱くことがあってもならないのです。(看護婦の弁、131P)
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