呪い             ボワロ&ナルスジャック


創元推理文庫  MALEFICES  大久保 和郎 訳

自首した獣医から弁護士への告白状が大部分をしめ、最後に種明かしとも言うべき獣医の妻から獣医の愛人の黒人女中に当てた手紙がついている。舞台は北フランスだが、獣医の愛人の住む島には、干潮の時にのみ出来る道を車で通って行くという点が特色。
獣医のロシェルは、近くのノワルムチェ島に住む女から、飼っている猟豹の診察を依頼され、出かける。しかし歳に似ず若く見えるその女ミリアンの謎めいた魅力と時折見せる残忍な性格にひかれ、深い関係に陥る。やがて妻エリアーヌの身に恐ろしいことが起こり始める。井戸に落ちてあやうく死にそうになる、地下室に降りる上げ蓋が開けてあり、落ちそうになる、挙げ句の果て、何か毒を飲まされた様子で苦しみ出す。しかもミリアンの元にあった自分の家の写真、女中の彼女らしい女が現れたとの証言・・・・ロシェルは、彼女が妻を殺そうとしていると確信する。ミリアンは、凶暴な性格を露にし出し、かまれたという理由で、私の持っている砒素を盗み出し、とうとうあの猟豹を殺してしまった。
ミリアンの不思議な魔力に惹かれた私は、ついに一方では妻を助けると言い訳をしながら、ミリアンと駆け落ちすることにする。しかし積みすぎた荷物と、不測の事故で、車は途中で立ち往生、満ちてきた潮にミリアンは飲まれてしまう。事件は発覚しなかったが、私は良心の仮借に耐えかねて自首を決意する。
そして最後に妻エリアーヌの手紙。夫の浮気はすべて知っていた。黒人女中のロンダが同情してくれて共同作戦を取った。井戸に飛び込んだのも、上げ蓋をあげたのも、砒素を飲んだのもすべて自分がやったもの・・・・。ロンダの証言やら家の写真の運搬やらが、ロシェルに恐怖を植え付けた・・・・。しかしとうとう彼は私の元に帰ってくる。

私は途中まで「どうやってミリアンが島からわたってきたのか。」ばかり考えていた。妻の自作自演だ、と気がついたのはエリアーヌの手紙を読む直前。それにしても感情のうごきにしぼってよくここまで長く迫力をもって書けるものだと感心する。
ただしどんでん返し度は、第一作の「悪魔のような女たち」の方が上かもしれない。それから潮汐を使った話は、「古い骨」「時の潮」などに使われ、だいたい最後に潮が押し寄せてきてと相場がきまっている、と予想され、舞台が作られすぎている感じはする。