東京創元社 SCULPTRESS 成川 祐子 訳
「過食症でブタのように太ったオリーブ・マーチンという女性が、その母親グウエンと妹アンバーを、棉棒で殴り殺し、肉切り包丁で頭と腕と足を切り離し、元通り並べるという所業をやってのけた。そして無期懲役(禁錮最低25年)の判決を受けた。」
フリーライターのロズは仕事をさぼっていたため、この事件をまとめて原稿にしなければもう契約はしない、と驚かされ、服役中のオリーブに会いに行く。しかし、会ってみると、犯行後、簡単に自白したと言うのだが、彼女にはオリーブがそんなことをする女性には見えなかった。どうも警察の捜査はいい加減だし、被告を護るべき弁護士のピーター・クルーに至っては4年も面会に来ていないと言う。
一方で現場に残された指紋や足跡は彼女の物ばかり。しかもオリーブは、妹と違ってどこに行っても嫌われているように見えた。粘土の人形を作り自分の世界に閉じこもりがちである。精神科医が正常だとしながら、弁護士は、限定責任能力を言い立てている・・・。家庭は滅茶苦茶だった。父と母は嫌い合っていたし、父は隣の家の主人とホモの関係にあるように見えた。
しかし調査を薦めるうち、犯行少し前に堕胎をしていたことが分かった。案外根はやさしいことも分かった。恋人をかばって、彼女は嘘の自白をしたのでは無いか。ならばその恋人は一体誰なのか。ならず者一家オブライエンの末息子なのか、弁護士のクルーなのか、父親なのか、といろいろと気をもませる。
これにクルーが委託された財産を使い込んだらしく、アンバーの子探しが難航する話、オリーブを取り調べたが、今は退職してはやらないレストランをやっている元警官のハルとロズの淡い恋、そのレストランを買い取ろうとする会計士の策謀などが絡み、話しは進んで行く。最後に真実が暴露され、オリーブは出獄することが出来るのだが・・・・。
4F小説というのだろうか女性の作者、女性の訳者、女性の主人公、女性の読者を対象にしている。適度のロマンがあり、暗い一方ではない・・・。人気は出たのだろう。しかし私自身が単純なせいか今一歩感動を受けなかった。その理由を考えてみると次のような点が上げられる。
(1)犯行現場や犯罪方法の具体的書き込みが不足しており、残酷と言う割には胸に迫ってこない。(昨年ヒットした「OUT」(桐生操)などとの比較で特に感じる。)
(2)オリーブの心理分析が十分とは言えない。粘土の人形はどのような心理を反映しているのだろうか。(「金属バット殺人事件」等との比較)
(3)エージェントから言われていやいや取り組んだ問題でいきなり「やっていない」と信じ込む主人公の考え方も問題。
(4)警察の初動捜査や弁護士の対応ぶりが、いくら何でもいい加減だ。(日本の基準で考えるからそうなのでアメリカでは当たり前なのかも知れない。?)
(5)最後に隣家の主婦が犯人らしいと言うところで終わるのだが、その推定の仕方、証拠のつめかたがはっきり書かれていない。
(6)会計士グループのいやがらせの様子も何だかマフィアの犯罪みたいに低次元。
ただ、話し全体としては面白く読み進たし、アメリカの現代家庭生活の一面を鋭く描き出しているとも思う。また必ずしもわかりやすい形ではないが、それらに非情に鋭い指摘が見られる。作者の本来の考え方を現しているととることも出来よう。以下に特に気のついた物についてあげる。
・キリストはただの預言者だわ、ビリー・グレアムのような。三位一体なんて言う戯言が信じられる?神は唯一無二か、無数に存在するのかどちらかよ。その日との感じ方がどれだけ想像力に富んでいるかで変わってくるの。わたしは、キリスト復活を祝う理由が見いだせないくち(19P)
・子供のころの彼女は、自分がこう見られたいというイメージを真実らしくするために、それと、期待を裏切られて荒れ狂う母親から自分とアンバーを護るために嘘をついた。あの子は拒絶されることが怖いの。人が嘘をつくのは、結局のところ、大抵それが動機なんですけどね。(229P)
・のぼせと言うのは愛情のごくお粗末な代用品なのよ。簡単に芽生えるけど、しぼむのも簡単なの。愛情は・・・真の愛情は・・・時間をかけて育てるものよ。(300P)
・その瞬間、三人が一斉にわたしに向かってわめきだしたわ。ママは中絶のことを持ち出して、わたしをあばずれと呼びながら、わたしの顔をひっぱたき続けた。アンバーは、ダデイはエドワードを愛しているから妬いているんだとわめき続けた。たまらなかったわ。(378P)
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