ハヤカワ・ミステリ文庫 4.50 FROM PADDINGTON 大門 一男 訳
クリステイの作品には「意外な犯人」という作品が多いがこれもその一つ。エルスペスは、パデイントン発4時50分でミルチェスターに向かう途中ブラッカムトン付近で、平行して走っていた列車の中で浅黒い紳士が婦人を絞殺、死体を列車の外に投げ出すところを見てしまった。死体が発見されなかった事から、警察では問題にしなかったが、彼女は友人のマープル婦人に相談する。
婦人は死体が落とされた場所はクラッケンソープ家の当たりと目星をつけ、友人の陽気で頭のいいルーシー嬢を屋敷に家政婦として潜り込ませる。一家は高齢でけちなルーザーを筆頭に次男のセドリック、三男ハロルド、四男アルフレッド、長女のエマ、次女の夫のブライアン等。ルーシー嬢はゴルフのボールを捜すふりをしながら、捜査をくり返すうち、ついに納屋の柩の中で女性の死体を発見。
しかし一家の者はだれも死体の女性を知らぬと言う。検討もつかなかったが、ロンドン警視庁のクラドック警部が調査を進める内に、数週間前マルテイーヌというフランス女性から、戦地で死んだクラッケンソープ家の長男エドマンドと結婚していた、子供もいる、との手紙が届いた、と判明。彼女はクリスマス前にこちらに来ることになったが、突然都合が悪いと来なくなった事実が明らかになった。殺された女性はマルテイーヌではないか。
夕食を食べた家族全員が腹痛を起こす。主治医のクインバーが調べるとカレーの中に砒素が入っていたという。そしてとうとうアルフレッドが死亡。さらにハロルドもトリカブトの毒を盛られて死亡。兄弟は皆金に困っているらしいから、当主のルーザーが死ぬというのなら分かるのだが・・・。見知らぬ夫人、アルフレッド、ハロルドが死んで一体誰が利益を得るというのだろうか。
そして最後にブライアンの息子の友人の母が「実はあのマルテイーヌというのは私のことだ。私はエドマンドと結婚し一子をもうけたが、ひっそり暮らすつもりだった。手紙など書いた覚えはない。」
犯人は実は金持ちのエマと結婚したかった。しかし妻がいるのでそうは行かない。殺してしまおう。一家の兄弟は死ねば死ぬほど遺産相続の時に取り分が増えるから都合がいい・・・・・。しかしマープルの張った罠におちてしまった。
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