パリから来た紳士         デイクスン・カー


創元推理文庫 THE HOUSE IN GOBLIN WOOD 宇野 利泰 訳

パリから来た紳士・・・・遺書の隠し場所
 男の役目は、パリで貧窮のどん底にあえいでいる娘の依頼により、瀕死の母が書いた遺言書を確保する事。実は母は悪い女にだまされて、いったんはその女に有利な遺言書を書いたが、書き直し、それを隠した。しかし到着したとき母はすでに意識がない。どこに隠したか、という問題。暖炉の石炭を燃す、そだと薪木のなかにまるめて入れておいたという事だ。最後に男の名が明かされるところが傑作・・・・。

見えぬ手の殺人・・・・長いしなやかな鞭
 被害者は「椅子」岩の窪みで動かない。銃の音に隠れて殺人者の鞭がとび、スカーフにからみつき、一瞬の内に殺してしまった。砂浜に足跡は残らなかった。

ことわざ殺人事件・・・・拾った銃弾を自分の銃で撃ち殺人
 特別捜査班はマイエルをスパイと思い込んでいた。そのマイエルが撃ち殺された。銃弾はベンドレル大佐のライフル銃から発射された事が証明された。しかしフェル博士はベンドレル大佐が射撃場で撃ち、砂の中に落ちた銃弾を拾い、それを別の銃で撃ったことをつきとめ、本当のスパイはマイエル夫人であるとする。

とりちがえた問題・・・・離れた島の殺人、望遠鏡機械殺人
 池の中の別室での殺人は実は泳いで行って殺した物だった。そして第二の殺人は望遠鏡の中に仕込まれた飛び出すピストンだった。脅された殺人狂が被害者の母が狂人だったと脅すところが論理的に面白い。

外交官的な、あまりにも外交官的な・・・・あざやかな人間消失
 イル・サン・カテリーヌなる避暑地で静養中のダーモット氏は、若い娘と恋いに落ちる。木立が囲む道の向こうの広場のテーブルでデートをしたが、物を探しに行くともどったまま、彼女は消えてしまった。小径の出口にいたヴァンデルベルは女給以外通らなかったという。やがて人間の血の付いたナイフが発見され、殺人容疑でヴァンデルヴェルは逮捕される。実は当局の仕組んだ芝居でスパイの疑いあるヴァンデルベルを調べたかった。

ウイリアム・ウイルソンの職業・・・・・珍商売、人間消失
 パトリシア嬢は若手国会議員のフランシスと婚約していたが「彼はウイリアム・ウイルソン商会と言うところに関心があるようなので、つけていったところ、そこで若い女と抱き合っていた。ところがちょっと目を離した隙に彼は衣服を残したまま消えてしまった。彼を探して欲しい。」実はその会社はそっくりさんを用意して、時に名士に息抜きのため消えてもらう商売。女は実は商会の秘書で、フランシスのそっくりさんと言うことだったが・・・。

空部屋・・・・風呂の中におちた電熱器によるショック死
 チェイスは夜アパートの自室で論文を書いているのだが、どこからかラジオの音。うるさくて仕方がない。階下の女生と一緒に探すと、空き部屋に男の死体。外傷はない。捜査にあたったマーチス大佐は死体が外から運ばれた事を発見、彼の召し使いを逮捕したが、彼の主張は「ご主人が風呂に入っているとき、私が誤って、電熱器をその中に落としてしまった。」

黒いキャビネット・・・・若い女性暗殺者の説得
 シニョーラ・ベネットは幼い娘ニーナに言った。「よく見ておきなさい。やっと悪魔の死がみられるのよ。」しかし悪魔のナポレオン三世は逃げ延び、暗殺者は断頭台のつゆと消えた。それから七年、ニーナは失敗した暗殺を繰り返そうとする。伯母のマリアと見知らぬ男が必死の説得にあたる・・・・・。

奇跡を解く男・・・・密室の中のガス栓と腹話術
 トムはセントポール寺院の回廊で恐怖におびえるフランス娘に出合う。「昨晩はカンヌキをかけておいた私の寝室に入り込み、ガス栓をあけ、私は殺されかかった。今またささやきの廊下から聞こえる「おまえは死ぬ。」との声。」ところがいけすかぬ伯母たちがやってきて彼女を連れ去ろうとする。事件はH.M.卿のもとに持ち込まれる。結末は暗くなったハンプトンの中のメイズでの活劇。実はフランス娘の婚約者が娘をフランスに連れ戻そうと打った芝居。ささやき廊下事件は腹話術、ガス栓をあけて恐怖を与えたのは婚約者に頼まれた伯母、最後は婚約者がフランス娘が好きになったトムを殺そうとした物だった。

(1954)

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