ピラミッドの謎   A・アーノルド

新潮文庫  Young Sherlock Holmes 宮脇 孝雄 訳

スピルバーグ製作の映画「ヤングシャーロックホームズ/ピラミッドの謎」の、クリス・コロンバスの脚本をもとに書き上げた作品。ミステリー界ではシャーロックホームズの研究書、贋作、パロデイが毎年数多く出版されているがこれもその一翼をになうものか。

時代は1870年、人格円満で裕福なロンドンの会計士が、あるとき、アパート3階にある自宅の窓から不可解な墜落死をとげた。その謎を解いたのがあの天才的な名探偵シャーロックホームズで、彼の初めての事件であった。

当時私、ジョン・ワトソンは16歳、ロンドンのある私立校に入学した、将来は医者になろうとしていた。ところが運命の導きによってあ並外れた自己中心主義者で、おろかなうぬぼれで一杯のシャーロックホームズと親しく付き合うようになった。彼にはよりそうように美少女エリザベスがいつもいた。

さて会計士の死は、ネズビット牧師、ワックスフラッター教授等の死を呼び、連続殺人事件へと発展してゆく。そして死の直前に不審な男がチリンチリンという不気味な音と共に現われていた事がわかる。やがてホームズが追求するうち、われわれは霧の都に跳梁する邪教集団ラメ・テップに遭遇する。

話はそれからさらに1812年にさかのぼる。5人の若者たちが大学に入る前にヨーロッパ旅行をしたあと船でアレクサンドリアに渡りさらにカイロに旅した。そこで大いに感銘をうけ、ホテルを建てようと言うことになった。しかし建築予定地は、古代の墓所であったためにいざこざが起こり、計画は頓挫し、彼らはイギリスに逃げ帰った。しかし・・・。

あとは冒険譚になるわけだが、邪教のいけにえにされそうになったエリザベス救出など映画むけの派手なドラマがいっぱいでなかなか面白い。

謎解きと言う点では少しものたりない気がする。なかなかエジプト考古学に関する薀蓄などが面白い。作者はこの方面を研究した事があるとのことだ。

・東洋の文化にはじめてふれて、彼は英国のキリスト教に疑問を抱き始めた。英国のキリスト教は、ほかの宗教はみんな間違っていると言っている「我よりほかに神を信じるなかれ」と旧約聖書にもあるが、ほかの時代、ほかの環境のもとで、人々は別の神をあがめ、自分なりに論理を追求してきたのだ・・・・(171p)