連続殺人事件         デイクスン・カー


創元推理文庫 THE CASE OF THE CONSTANT SUICIDES 井上 一夫 訳

妖気ただようスコットランドの居城で、アンガス・キャンベルが、城の塔の天辺から落ちて死んだ。その葬式に、数ヶ月前から雑誌の上で激しい議論を繰り返していたアランとキャスリンが呼ばれるが、鉄道会社の手違いで、同じコンパートメントで一夜を明かしてしまった。城には、アンガスの女で当主のエルスパット、遺産相続者コーリン、赤新聞記者スワン、キャンベル家弁護士ダンカン、保険会社のチャップマン、フェル博士等が到着していた。
保険会社は、アンガスの死が自殺であれば、金を払わなくて良い。ダンカンはなんとか他殺か事故に持って行きたい。運び込まれた謎の箱、消えた日記は何を意味するのか。さらに友人フォーブズが行方不明になったことも謎を呼び、フェル博士の本格的調査が始まる。
やがて、コーリンが同じような事故に遭い、フォーブスが閂のかかった近くの小屋で首を吊って死んでいるのが発見された。窓には鉄の網格子・・・・。
最初の事故は、ドライアイスを室内に持ち込み、窓から飛び降りた自殺、第二のものは同様の手法を使った殺人なのだが、フォーブス殺しが凝っている。犯人は殺害後、正面ドアから出て、閂にひっかけた釣り竿を鉄の網格子の外から引っ張って密室を完成させた。
作者は、最後にアランとキャスリンを結ばせる事も忘れていない。犯人は、長いこと行方不明になっていた遠縁のロバートで、目的は遺産狙い。彼は、保険会社のチャプマンに変装していたのだが、フェルが交渉して保険金をおりるように取りはからわせる代償として、逃がしてやるという解決が面白い。
全体、カーの作品にしてはめずらしく軽妙な雰囲気のある作品である。ただ殺人の動機の説明あたりの切迫感が弱いことが物足りない気がした。
・自殺者というものは、明かりをつける手段さえあれば、暗いところでは死なぬものじゃ。(215P)
・人間が自分で首を吊ったか、先に扼殺されたものを首吊りのように後から釣ったものか、これを判断することほど難しい問題はない・・・(265P)