リスタデール卿の謎   アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 THE LISTERDALE MYSTERY 田村 隆一 訳

この短編集には探偵役はでてこない。全体しゃれの聞いたものが多いようで、ハッピーエンドで終わっている。ウイリアム・アイリッシュの短編を想起した。筋を追う記述が多いので、今回は発端とおちに分けて書いてみることにした。「リスタデール卿の謎」がよく出来ているが、外に「ラジャのエメラルド」「ジェインの求職」などが良いと思った。
リスタデール卿の謎
発端 娘、息子二人を抱えて生活に困っていたヴィンセント夫人は、新聞広告でアフリカのいるというリスタデール卿の館を格安で借りることになる。家の取り仕切りはすべて執事のクエンテインがやってくれる。しかし何かあると息子が調査を開始・・・。
おち 庶民の生活を体験したいと卿がクエンテインになりすまし、面倒を見ていた。
ナイチンゲール荘 夜鶯荘に記述
車中の娘
発端 叔父と大喧嘩して文無しになったローランド君は列車で旅に出るが、コンパートメントにエリザベス嬢が飛び込み「助けて!追われているの。」それからはどたばた劇。黒い髭の男を追いかけたり、預かった箱(金の指輪入り)なくなったり、バルカンの小国カトニア国の王女を返せと言われたり・・・。
おち エリザベス嬢は実はカトニア国王女と結婚するローランド卿の妹。最後はめでたくむすばれそうな雰囲気
六ペンスの歌
発端 旧友が尋ねてきて、裕福な一家で起こった大叔母殺人事件を調べて欲しいという。一家はその旧友夫婦、叔父夫婦、それに十年以上も前から勤めているしっかり者のお手伝いの女性だけ。誰も犯人には見えないが、誰もが外から尋ねて来た者はいないという。
おち 外部からの侵入者の犯行だが、かばう者がいれば可能と言う考え方。お手伝いのならずものの息子が犯人。
エドワード・ロビンソンは男なのだ
発端 恋人のモードは完璧な女性で財布の紐を握っている。ところがエドワードは懸賞で大金を獲得、内緒で豪華な車を買ったが、それを他人のにた車と間違え、気がつくと側には美女とダイヤモンドのネックレス。そして素晴らしいドライブ。
おち 最後は真相が発覚し、美女とは別れ、ダイヤモンドはなくなったけれど、男としての自信がついて、モード嬢にプロポーズ。
事故
発端 エヴァンスは九年前に砒素を常用している夫が飲み過ぎで死に、訴えられたが無罪になったアントニー夫人は新しい夫の実験室を管理し、夫をを殺そうとしていると確信。夫婦とエヴァンスでお茶を飲むが、エヴァンスは夫人のものとカップを入れ替えた。
おち 苦しんで倒れたのはエヴァンスだった。彼女は夫を愛しており、二人の仲を割こうとしたエヴァンスを殺したのだった。
ジェインの求職
発端 失職していたジェーンはオストローヴァの皇女ポーリンの代役に選ばれる。そしてバザー会場で皇女と自分の赤い服を着替えのぞんだところ、何物かにお付きの女官と共に連れ去られ、郊外の屋敷でスープを飲まされ、気を失う。気がつくと元の赤い服。
おち 新聞にはバザー会場に赤い服を来た女性を含む窃盗団が出没!とあった。窃盗団がアリバイ作りのために彼女を利用したのだった。
日曜日には果物を
発端 しがない女中のドロシーは恋人のエドワードの運転するおんぼろ車に乗せられて郊外へ。ところが二人で開けたサクランボの箱の中からルビーの首飾り。おりから新聞には宝石強盗の話、これは盗品、警察に出頭すべきやいなや・・・。
おち 実は同時にある果物屋が宣伝のためにいくつかに一つの割合で果物かごに宝石のイミテーションをいれていたのでした。
イーストウッド君の冒険
発端 新作に困っていたイーストウッド君のところに甘い女性の声で電話。出かける本当、彼女と懇ろになっていると突然警官二人が踏み込み、「ローゼンバーグ殺害のかどで逮捕する。」懸命に釈明しようと自宅に連れて行き、証拠を見せるが、気がつくと家の中は空、警官二人は消えていた。
おち 実は泥棒三人組にまんまと一杯食わされた話。しかしめげないイーストウッド君は小説を泥棒の話してくれた「スペインショールの謎」とかえ、猛然とタイプし始める。
黄金の玉
発端 シテイにあきたジョージはメアリーに誘われて車に乗る。プロポーズされてためらっていると郊外の屋敷に連れて行かれ「ここが私たちのお屋敷よ。」突然強盗が現れ、ピストルを突きつけられるが、突き飛ばしてしまう。
おち メアリーが強盗に襲われたら男がどうするかを見るためのテストをしたのでした。最後はプロポーズの仕方でもめたけれど、めでたくゴールイン。
ラジャのエメラルド
発端 交際していたグレイスが成功し、ジェイムス・ボンドは彼女の友達と共に金持ちの集まるキムトン海岸に来たが、脱衣所がない。そっと個人用と書いてあるモンプレジールなる脱衣所に入り込んで一泳ぎしたあと、また着替えるとポケットに大粒のエメラルド。返しに行くと偽警官に取り押さえられ・・・・・。
おち その偽警官を逆に警察につきだし、エメラルドの持ち主ラジャのご招待。グレイスの誘いに「悪いね、ラジャに誘われているんだよ。」
白鳥の歌
発端 プリマドンナ・ポーラはトスカ公演のため、準備に余念がなかったが、スカルピオ男爵役の男が病気で倒れ、急遽隠退していたフランス人歌手ブレオンを引っぱり出す。ブレオンはその夜ある女性を助けたがその恋人を見殺しにせざるを得なかった話をする。そしてふとポーラを見上げたプレオンの顔に恐怖が走る。公演は大成功だったが、ポーラが誤ってプレオンを最後の場面で刺し殺してしまった・・・・。
おち 恋人を歌劇「トスカ」よろしく見殺しにされた女性こそ若き日のポーラだった。