シャーロック・ホームズの叡知     コナン・ドイル


新潮文庫 延原 謙訳

技師の親指、緑柱石の宝冠
シャーロック・ホームズの冒険」を見よ

ライゲートの大地主
 アクトン老人の元に泥棒が入り、象牙の文鎮などへんてこりんなものが盗まれた。しばらくして氏と土地問題で争っているカニンガム父子のもとに、賊が押し入り、運転手と格闘の末射殺して逃げた、という事件がおこった。運転手は手に「12時15分前に教えてたぶん」と書かれた紙の切れ端を持っていた。
 ホームズは、書かれた文字がどうやら1単語づつ二人で代わる代わる書いたらしいこと、字体からどうもその二人は親子ではないか、などと推定する。運転手と賊の争いを目撃していたカニンガム父子に事情を聞き、彼らの部屋を調べると・・・。
 妙なものが盗まれた、と言う話で、クリステイの「ヒッコリー・ロードの殺人」を思い出した。(1893.6)

ノーウッドの建築主
 飛び込んできたヘクター・マクファーレンの話は「昨夜、郊外に住む評判の悪い建築士ジョナス・オルテガー氏の材木置場から出火、全焼したが、焼け跡から黒こげ死体がみつかった。オルテガー氏が行方不明になり、部屋には格闘した跡と私の樫のステッキが発見された。そのため容疑をかけられ、追われている。助けて欲しい。」
 二日目に調査を行ったときに、マクファーレンの指紋が発見された。レスタード警部はマクファーレンが犯人と息巻く。それを押しとどめてホームズが調べると、オルテガー氏はマクファーレンの母と結婚できなかったことを恨んでいるらしい、前日、マクファーレンとオルテガー氏はあっており、その時ステッキがなくなった、事などが分かった。
黒こげ死体は偽物で、オルテガー氏は家の中にいるとにらんだホームズは、小さな火災をおこしてみんなに「火事だ!」と叫ばせる。すると・・・。
 蝋型による指紋の偽造や壁の中に隠れるトリックなどが面白い。「赤い拇指紋」参照。(1903.11)

三人の学生
 1895年にある有名な大学町で過ごしたときに持ち込まれた話。講師兼指導教師の一人から「寄宿舎の自室の机の上に奨学金試験の問題をおいておいたが、召使いが鍵をかけ忘れたすきに誰かが入り込み、問題を写したらしい。調べて欲しい。」
 4階のひどく愛想の悪い学生、3階に住むインド人学生、2階の破産した貴族の息子の3人が容疑者。ホームズは「学生の一人がたまたま、窓から教師の部屋の中を覗いたところ、机の上の問題を発見、鍵も開いていたことから忍び込み、問題の一部を写したが、教師が戻ってきたためあわてて立ち去った、見つけた召使いがかばった」と考える。すると覗けるだけの身長のあるものは?(1901.6)

スリー・クオーターの失踪
 
ケンブリッジ大学ラグビー部のオヴァートンから「大事なオックスフォード大学との試合を明日に控えて、チームの中心のスリー・クオーター、ゴドフリー・ストーントンが突然姿を消した。捜して欲しい。」自室を調べると、吸い取り紙に「後生だから僕たちをお助けねがう」。ストーントンは、将来叔父の老貴族の遺産をいづれ受け取ることになっているが、この叔父はひどく吝嗇で何も知らぬらしい。一方ストーントンの関係していた医者は、非協力的でこの件から手を引け、と言わんばかり。
 尾行も何度かまかれたが、犬を使ってついに行き先を勤めると、さる農家に一軒家。中には女性の死体と悲嘆にくれる若い男。その男がストーントンだった。彼は発覚すると相続権が無くなるため、秘密裏に恋した女性と結婚したが、女性が悪性の肺結核にかかり、たまらずぬけだしたものだった。
 この作品にホームズが学生時代ウエールズとの対抗戦に補欠で出場した、とある。(1904.8)

ショスコム荘
 ショスコム荘は未亡人で水腫病ののピアトリス・フォールダー夫人が経営し、弟で暴れ者のサー・ロバート・ノーバートンと共に暮らしている。膨大な財産を夫人は一代限り経営し、死ねば夫の弟に行くことになっている。ロバートは競馬の馬を育てているが、借金で苦しく、今は次回の競馬で手持ちのショスコム・プリンスが勝つ事にかけている。そんな状況での調教師長ジョン・メイスンの相談である。
ロバートは最近狂っているのでは無いかと思う。フォールダー夫人の愛していた犬を外にくれてやったし、夫人に暴力も振るうようになった。そして時折納骨堂に行くので、調べたところ、置いてあった死体が一つ消えてしまった。一方夫人は前は馬に砂糖をやるなど愛したが最近はずっと家に閉じこもっている。調べて欲しい。
今いる夫人が別人、と見破ったホームズは礼拝堂でロバートと対決。実はフォールダー夫人が亡くなったが、今文無しになるとショスコム・プリンスがレースに参加できなくなる恐れがある。そこでフォールダー夫人の遺体を密かに運び出し、他の棺に入っている死体と交換、家には身代わりをたてて生きているように見せ掛けた、と言う。(1927.4)

隠居絵具屋
一財産ためたジョサイア・アンバリーの訴えによると、彼は20も年下の女と結婚したが、彼女は医者のアーネストと懇ろな関係になり、財産の入った金庫とともに消えてしまった、と言う。ワトソンが事情を聞きに屋敷に出かけると老人は妻が消えた日に行く予定だった劇場の切符をみせて、けしからんをくり返す。
しかしホームズは偽の電報でワトソンとアンバリーを田舎の教会に呼び出し、その隙に屋敷の中を調査。アンバリーが、妻と医者を金庫室に押し込め、ガスを送り込んで殺したことを見破る。金庫のガス室のアイデアが面白いと思った。(1927.1)

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