創元推理文庫 The Secret Files of Sherlock Holmes 押田由起訳
私のなくなった叔父はワトソンというが、シャーロック・ホームズの相棒のワトソンとは異なる。しかしある経路で、叔父はホームズの扱った事件のうち、公表をはばかるものを記した本物のワトソンの書いたらしい文書を手に入れた。今では時もたっているのでそれを公開する、という前提である。1990年に上梓されたが、正攻法のシャーロックホームズのパステイーシュで7つの短編からなる。
消えた給仕長
屋敷を出入りしたのはパン屋の職人だけ・・・・。結婚がせまっていた給仕長が目撃者のいるなかで突然消えてしまった。ホームズの追跡が始まる。実は給仕長には、実は別に恋人がいた。最初から金を作り、消えてしまおうと考えていたのだ。
アマチュア乞食
ヴェナプルズ少佐の息子についての相談。スタンフォードにやっているが、手に負えぬ状態で、学校を欠席し 退学処分を受けかねない状態、しかも見分不相応の金を持っている。ホームズがようようの情報を集め、慈善団体を名乗った詐欺グループを摘発する。
奇妙な毛虫
ホームズが駆けつけたものの、旧友でジャーナリストのイサドラ・ベルサーノは狂ったように窓から飛び降りて死んでしまった。送られてきた奇妙な毛虫にかまれたからなのか。しかし毛虫の正体が判明すると共に幻覚剤を飲まされていた事がわかった。彼のメキシコ時代の取材旅行が、事件の背景にあることが判明したが・・・・。
高貴な依頼人
メアリー・ウッズ夫人、実はウエルボーン公爵夫人に届いたちょっとした不倫を種にした脅迫状。犯人は身近にいるとホームズは考え、犯人を絞り込んでゆく。
名うてのカナリア調教師
ロージーはひどく条件のよいメイド職に応募し採用されたが、頼りをよこさなくなった。ホームズが調べると仲介の夫人も、勤め先の主人も消えていた。しかし主人の消えた屋敷に「カナリアの籠」があったこと、テムズ川からあがった貴婦人姿の娘の死体等をてがかりに、ホームズは事件を解明してゆく。
流れ者の夜盗
准男爵邸に夜盗が押し入り、家宝の品数点を持ち去った。ホームズは盗まれた者の特色、目撃者情報などから犯人を特定し、待ち伏せする。
打ち捨てられた灯台
ホームズの兄で内閣の助言役をしているマイクロソフトの相談。天才科学者モーリス・カリスターが、ドイツに国家機密を売っているらしい。ホームズと私は彼の滞在するうち捨てられた灯台のそばの屋敷を監視し続けるが怪しい様子はない。鵜に秘密書類を飲み込ませ運ばせるというテクニックが面白い。一番よく書けていると思った。