創元推理文庫 THE SIAMESE TWIN MYSTERY 井上 勇訳
クイーン父子はデユーセンバーグに乗ってカナダからの帰り、古いインデイアン集落タッケサスの山の中を走っていた。ところが突然の山火事に囲まれ、山中のゼーヴィア博士の館にたどり着き、休ませてもらった。不気味な館に一泊し、翌朝朝食に博士が現れない。調べて見ると、自室で自分の銃で胸を二発撃ち抜かれて絶命していた。
一家は夫人のサラ、弟のマーク、家政婦のホイアリー夫人、助手でパーシヴァル・ホームズ、下僕の骸骨であったが、客がいた。博士に治療を受けているシャム双子のフランシスとジュリアン、母親のマリー・カロー夫人、秘書のアン・フォレスト、クイーン父子の車と出会った時、ビュイックに乗っていたよそ者のスミスである。一家の間で最近安物の指輪が無くなる事件が相次いでいた。
ゼーヴィア博士は右手に半分に破かれたスペードの6を持っていた。ところが専用便箋にはサラ・イゼールをあらわすSIXの文字。リチャード警視はこれを死者の犯人を示すダイイングメッセージと断定、サラを攻めるとあっさり白状したので監禁した。ところが息子のリチャードは右利きのものがカードを破いて半分を捨てた場合、カードは左に残ると断定、サラは誰かをかばって罪を認めたと判断する。
エラリーは、全員を集めて殺害現場の再現し、最後にカードについていた指紋から、犯人は左利き、今実験した中ではマーク一人と決めつける。マークは逃げ出すが、リチャードに撃たれる。しかしマークは「私は二時頃書斎に行って、博士が殺されているのを見つけた。そこで相続を考えて、サラの犯行に見せ掛ける工作をした。しかし私は撃っていない。真犯人は・・・。」と言ったところで意識を失った。その夜、みんなで見守ったが、見張りのリチャードはクロロフォルムをかがされ、マークは蓚酸を飲まされて殺害された。手にはダイヤのジャックの半分。ダイヤはフランス語でカロー、子供が二つくっついている、と解釈すれば、犯人はシャム双子になるが、二人は頑強に犯行を否定する。
ふとそのときリチャードは自分の安物の結婚指輪がなくなっていることに気づいた。カードを保管してあった金庫を開けようとした形跡が発見された。さらに博士は糖尿病だったから死後硬直が早く起こる、するとあのスペードの6は細工をしたものではないかも知れないことがはっきりした。最初のメッセージは正しく、2度目のものは犯人の細工ではないだろうか。
その間にも猛火はせまってくる。最後にエラリーは「もう。これで我々は死ぬだろう。しかし私は犯人を知っている。犯人は父の指輪を盗んだことから盗癖があるはずだ。」と指輪を投げ出す。猛火に犯人は発狂したように「私が殺した!」と叫ぶ・・・。
異様な境遇で、官憲の手を借りずに、エラリーが独力で解決した事件、と言うことだが、余り私は好きになれなかった。ダイイングメッセージや左利き、右利きの話は解釈で変わることもあり、どうも状況証拠に近い評価しか与えられない気がする。シャム双子の研究と言うのも何かおどろおどろしすぎる気がする。山火事で一件の家が襲われそうになっている時に地元警察はあんなに冷たいものなのだろうか。盗癖が犯人発見のきめてになるというのもわざとらしい気がする等々。(1933 28)
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