死刑台のエレベーター ノエル・カレフ


創元推理文庫 ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD 宮崎 嶺雄 訳

夕闇せまるパリの一角、金に困った輸出入商会社長のジュリアン・クルトワは、ビルの窓伝いに金貸しの部屋に忍び込み、射殺し、証拠の書類を奪う。やきもちやきの妻に会社前で待ち合わせの電話をしてエレベーターに乗るが、手違いでその中に閉じ込められてしまう。
一方外ではいわゆる「実存主義者」タイプのぐうたら青年フレッドが、愛人のテレザとジュリアンの車をかっぱらって逃避行。待ちあわせを期待してやってきた妻は夫がいない、しかもジュリアンの車に若い女が乗り込み、去っていったからおさまらない。夫が女と消えた、離婚するとわめく一方、夫の詐欺的行為を兄のジョルジュにあげつらったから、ジョルジュはジュリアンを訴えると息巻く。
エレベーターの中では必死の脱出の試みが続くがうまくゆかない。車のフレッドは、安モーテルに落ち着いたが、テレザに結婚を迫られ、その上妊娠を打ち明けられるが、金はない。とうとう旅行中のブラジル人夫婦を襲って、殺してしまう・・・。
そんな風に話しが進み、やっと36時間経て、エレベータが動き出し、ジュリアンは脱出するが、なんとブラジル人夫婦殺しの犯人として逮捕されてしまう。鉄壁のアリバイがあるのだが、それは金貸し殺しにつながるとあって、述べ立てる事ができない・・・・。

エレベータの中に閉じ込められる、というアイデアは非常に面白いし、フレッドとテレザの最後も筆力十分で泣かせる。
しかし現実的側面から考えると無理が多すぎる様に思う。窓伝いに金貸しの部屋に忍び込むというが、目撃者はいなかったのか、金貸しは侵入者に気がつかなかったのか、フレッドとテレザが一緒に死んでいるのに、なぜテレザがジュリアンの共犯者と考えたのか、モーテルの主人になぜフレッドの方を確認させなかったのか、などなどいろいろある。恐らく作者は最初のアイデアに酔い、物語にし、つじつまをあわせるように書き足して行ったのではないだろうか、という気がする。