扶桑社ミステリー A SIMPLE PLAN 近藤 純夫 訳
ハンクの父と母は破産して、半ば自殺のような形で亡くなった。遺言で兄のジェイコブと毎年12月31日に墓参りに行く。その年は、これに兄の友人ルーが加わった。ハンクは会計士だが、ジェイコブとルーは職がなくいつもピーピーしていた。
雪の公園の中で墜落している小型飛行機を見つけた。パイロットは死亡していた。ところがそこにあった袋から400万ドル以上の金が出てきた。警察に届けようとも考えたが、ハンクが預かることにし、その飛行機が見つかって金のことが騒がれなかったら、山分けしようと決めた。ところが巡回に来た保安官のカールはやり過ごしたものの、農場主のドワイトをジェイコブが倒し、ハンクがとどめを刺してしまった。
「ばれるわけはないわよ。」と妻のサラに元気づけられ日にちが過ぎて行く。ところがだらしないルーが、博打で金をすり、あの金を使わせろという。兄も家賃を出せと言う。たてかえたが、ルーはドワイト殺しをばらすと脅し、さらに大金を要求してきた。
このままでは強請り続けられると考えたハンクは、サラの進言に従いジェイコブとルーを呼び出し、酔わせて「自分がドワイトを殺した。」と証言させ、これをテープに取る。騙されたと知ったルーは、銃を振りかざして怒るが、気がついて出てきた妻のナンシー共々射殺してしまった。さらにこのまま気の弱い兄をほおっておいては、いつか追求された白状する、と怖れたハンクは、やむなく兄のジェイコブまで殺してしまった。その上サラの助言でルーが浮気を発見し二人を射殺、駆けつけたジェイコブと撃ち合って両方死んだように見せるために、大家のソニーを呼び出して、裸にして射殺、死体をナンシーのそばにおいた。
みんな死んで、ハンクとサラと娘のアマンダ三人のつかの間の平穏な生活が始まる。しかし半年開ける目前になって、FBIがあの金が誘拐犯の身代金で番号が控えてあると知り、サラの使った百ドル札一枚を取り返すために、ハンクはさらなる殺人を繰り返す・・・。
人はし何かの決断にせまられ、大して考えもせず一方を選択する。一つの決断が次の決断をせまる。そしてまた選択する。こうしているうちに気がついてみると当初予想もしなかった方向に自分が流されてしまっていることに気がつく・・・そんな事を全体として教えているように見える。日本流に言えば「後悔先に立たず」
ストーリーは単純だが、それだけに一つのテーマをじっくり読者に考えさせてくれる素晴らしい作品と思う。旅先で偶然出会った小さな事が悲劇の発端になり、主人公が巻き込まれて行くという点で「ミザリー」を思い出させた。
作者はこの作品を書いたとき弱冠二十八歳という。よく人の心のうつろいが分かるものと感心、心理学でも専攻したのだろうか。
990214 r990912