死人の鏡      アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 MURDER IN THE MEWS 小倉 多加志 訳

ポアロが探偵役をつとめる中編小説4作を治めている。それぞれに趣がある。
厩舎街の殺人
アレン夫人が頭を銃で撃ち抜いて死んでいた。しかし、右手に銃、左耳に銃口、こんな自殺はありえない!。しかも不思議なペン皿の位置、破り盗られた吸い取り紙。アレン夫人を強請っていたユーステスなる男の存在。ついに彼は逮捕されたが・・・・。これは通常と違い、自殺を他殺に見せ掛けようとした犯罪。
謎の盗難事件
メイフィールド卿が夕食後友人と外で話していると、なにやら悲鳴と族の逃げる姿。あわててとってかえすと秘書が整理知っていた新型爆撃機の図面がちょっとの隙に盗まれたという。秘書もあの悲鳴で一瞬席を離したから、その間の仕業か。屋敷内には国際的に軍事情報を売り歩くヴァンダリン婦人が来ていたから、彼女の仕業か。ポアロは外国との取引のために卿自身が婦人と組んで盗難劇を起こしたと見破る。
死人の鏡
シェヴニックス=ゴア準男爵は非常な財産家で、屋敷では絶対的な権力を持っていたが、ポアロに「至急来てくれ。」の手紙。しかし遅かったのか到着したとき、密室で頭を銃を撃って死んでいた。自殺か、他殺か。准男爵は非常に家名を重んずる男、しかし娘は父親の薦める従兄弟と結婚する気はなく、従兄弟も同様だが、これに遺産問題が絡んでくる。庭の足跡、閂のかかった窓、鏡に向いた死体などからポアロは犯人が死体を自殺に見えるよう動かしたと推定する。
・窓のハンドルをまわす。中央の錠前の心棒が地面の穴からあがるので、窓の観音開きのドアを手前に引っ張ることが出来る。一ぺんあけておいてもう一度しめる・・・ハンドルは回さずにしめるのだ。そうすれば心棒は穴の中に入らずにすむ。ハンドルを離してちょっと間をおき、それから心棒の真ん中あたりを、とんとんと素早くたたく。たたいたはずみで心棒は穴の中に落ち・・・・ハンドルもひとりでに回る(271P)
砂に書かれた三角形
ロードス島の海岸に二組のカップル、むすっとしたチャントリー中佐とヴァレンタイン夫妻、ダグラス・ゴールドとパメラ夫妻。ヴァレンタインとダグラスが怪しげな雰囲気、中佐とダグラスの大喧嘩、パメラ夫人の嘆き・・・・そんな中、ヴァレンタインが中佐のカクテルを飲んで死んだ。ダグラスは中佐から「殺そうとしたな!」と非難され、ポケットから薬(ストロファンチン)が出てきて逮捕された。しかしポアロはヴァレンタインに飽きた中佐と彼に惚れたパメラの犯罪と見破る。プロットは「白昼の悪魔」と同じ。