死の贈物 パトリシア・モイーズ


ハヤカワ・ポケット・ミステリ WHO SAW HER DIE? 皆藤 幸蔵 訳

クリスタルは、イギリスの片田舎にコンパニオンのドリーとひっそりすむ富豪の未亡人である。彼女の誕生日に、三人の花の名前を付けた娘達が、贈り物を持ってやってきた。オランダからは園芸家ピートと結婚したバイオレットが、薔薇の花を持ってやってきた。フランスからは台所用具で成功したチャールズと結婚したダフォデイルが、シャンパンを用意して来た。そしてスイスからは医者のエドワードと結婚したプリムローズが、夫君が所用のため一人でケーキを持参してきた。数日前からなぜか殺されると怖れていたクリスタルに呼ばれて、ヘンリ主任警視夫妻も呼ばれていた。
ところがパーテイの折り、ヘンリが、毒味役を買って出たにも関わらず、未亡人は、皆と乾杯し、ケーキを食べ、薔薇の花の匂いをかいだところ大きくあえぎ倒れてしまった。殺人は行われた。しかも毒は、どこからも発見されない。そして昏倒して重体となったドリー。ヘンリの男のメンツをかけた調査が始まる。
クリスタルの膨大な遺産は、三人の娘とドリーに分け与えられることになっていた。一見満足した三組のカップルにはそれぞれに問題があった。ダフォデイルは、亭主の息子と恋仲でまとまった金が欲しかった。プリムローズは、夫と冷戦状態、こちらも自分の財産確保に懸命。そしてプリムローズの亭主エドワードは、研究所設立資金が欲しかった上、田舎の生活に飽きたバイオレットと恋仲・・・。この辺のセッテイングが実にうまい。
実はクリスタルはかって肺結核だったが、ストレプトマイシンの多用によって治癒した。しかしおかげでアレルギーに陥っていた。薔薇の花は出荷用にストレプトマイシンをかけることがある。実際にかけたのはエドワードの指示で動いたバイオレット。そしてエドワードは、ドリーも殺そうとするのだが・・・・。

ストレプトマイシンアレルギーの利用という非常に特殊な殺人方法を使っているが、実際に北イタリアであった事件を元にしているという事だ。人物描写が申し分なく、プロットは十分衝撃的であり、背景も完璧、古典的なフーダニットのおもしろさも十分生かされている、という書評は当たっている。
・苗床では、バクテリアに腐食されないように、花にペニシリン、オーレオマイシン、ストレプトマイシンなどの噴霧をかけます。(247P)
・パラチオン殺虫剤(254P)