ハヤカワ・ミステリ文庫 THE HOUND OF DEATH 小倉 多加志 訳
「検察側の証人」だけはまともな裁判小説であるが、残りは怪奇現象、予言、超能力などをあつかった短編集。難しくてどう解釈して良いか分からぬものもあった。
死の猟犬
第一次大戦中、ベルギーの小村にある修道院に、ドイツ軍が侵入しようとしたとき、突如大爆発がおきて、ドイツ軍が吹っ飛び、焼け跡の壁には巨大な犬の形をした火薬跡が出来た。村の人は、その爆発が修道女マリー・アンジェリックの超自然的な能力がが引き起こしたものと噂していた。彼女の夢に見た第六のみしるしと言うのは本当の話だろうか、それとも彼女の面倒を見ていたローズ博士が吹き込んだものだろうか。
赤信号
私が好きな、ジャック・トレントの妻クレアは霊媒。今日はうちへ帰らない方がいい、と予言。帰ったところ、アーリントン卿が殺され、拳銃が私の引き出しから発見されたことから、疑われるのは確実。善後策を協議しようとトレントに相談すると彼は仮面を剥がした。気狂いで、卿を殺してその罪を私にかぶせ、クレアをこれからさいなもうとしていたのだ。
第四の男
たまたま列車に居合わせた男は、4つの性格を持ったフェリシーボウルについて話した。全く別個と思われた意地悪で頭が良く陽気なアネットは彼女の分身だったのだ。
ジプシー
デイッキーはジプシー嫌いで有名だった。訳を聞いてみると何回かジプシーのホワース夫人に出会い、その予言通り悪いことが起こったからだ。そして最後に予言通り彼は手術で死んだ。しかし友人のマックファーレンは夫人が亡くなって呪縛が解け・・・・。
ランプ
昔子供が飢え死にしたという幽霊屋敷にランカスター夫人とその子が住むことになった。しかし感受性の強い子は飢え死にした子を次第に意識するようになる。
ラジオ
やさしい甥に見えた男は、実は遺産目当てで弱った老婦人を殺そうとしていた。ラジオを通じて流れる老婦人の死んだ亭主の声、亭主の亡霊。しかし成就したとき、天の采配だろうか、書き直した遺言状は暖炉の中に落ち、財産はすべて姪に行くことに・・・・。
検察側の証人
ヒッチコックにより映画化された作品。有能な弁護士メイハーンは、ある男から「金持ちの老婦人を助けたが、彼女が何者かに殺され、疑いが自分にかかっている、助けてほしい。」との依頼を受ける。無罪を信じたメイハーンは、検察側の証人として出てきた女中の発言を、闇の女から手に入れた手紙により、インチキだと決めつけ、無罪を勝ち取った。しかし闇の女は検察側の証人が変装したものだった。彼女は被告の有罪を確信していたが、無罪にしたかったため、弁護士に自分の証言を論破させるようし向けたのだった。
青い壺の秘密
ある時間にゴルフのショットをしようとするとどこからか助けを求める声。音源らしいヘザー荘を尋ねるが、そこの娘は夢で青い壺の恐怖にさいなまれると言う。ラヴィントンなる男が相談に乗りだし、青い壺を持って、ヘザー荘で一晩過ごして見ようと提案するが、壺を持ってどろん。壺は叔父の物だったが、ものすごく高価な物だったとのこと。
アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件
アーサー卿がその屋敷に行くと奇妙な灰色の猫が見え、鳴き声が聞こえるが、周囲の者はなにもいないという。調べると、アジア系の婦人らしい後妻がかって灰色の猫を殺したという。
ある日突然自室で婦人が苦しみだした。毒を盛られたらしいが一命を取り留めたアーサーがミニ行くとショックで婦人は死んでしまった。西洋版、ばけ猫騒動!
翼の呼ぶ声
ヘイマーはその両足の無い男の笛の音を聞くと気持ちは天に登り、体は地に残る妙な気持ちを味わった。医者に相談したのち、再びその男に会ったとき、男は牧神のように幸せに見えた。ヘイマーは自分の財産を処分し、執着から解放されて自由になるが・・・・。
最後の降霊会
霊媒のシモーヌは疲れていたが、義務感からエクス夫人の死んだ子の霊を呼び出す。エクス夫人は警告にも関わらず、子供を抱き上げて去る。霊魂のぬけたシモーヌは体が半分になって死んでしまった。母親の子に対する狂気の愛情と肉体と霊魂の分離話が面白い。
S・O・S
荒野にぽつんと建つデインズミード家を訪れたクリーヴランドは何か雰囲気がおかしいことに気づく。そしてテーブルに書かれたS・O・Sの記号。莫大な財産を相続することになった親が実子可愛さから継子を砒素中毒で殺そうとする話。