死の蔵書           ジョン・ダニング


ハヤカワ・ミステリ文庫 BOOKED TO DIE 宮脇 孝雄 訳

 私は、デンヴァー警察の殺人課巡査部長、元ボクサーで古書蒐集のプロ。
 古本の掘り出し屋ボビーが、たたき殺された。この殺人は、私にジャッキー・ニュートンを思い起こさせた。彼は実業家でうなるほどの金があるのだが、浮浪者など弱者をいじめ抜いて殺す趣味を持っている。過去何度か容疑者として疑われたのだが、彼は金の力でうまく逃れているが、私は彼が犯人と確信している。
 証拠を得ようと彼をマークするうち、私は彼に脅かされているバーバラと遭遇、助けようと彼をトリックにかけ、捕らえる。人里離れたところに導き、手錠をはずしてやり、正々堂々と殴り合い、ついにこてんぱんにのばしてやった。
 ところが彼に訴えられ、私は警察を辞めざるを得なくなった。友人の薦めで、私は古本屋を開店、ミス・プライドを雇い入れ、順調に仕事をスタートさせた。あのボビーは死の直前、弁護士のバラードの憎み合う遺児ジュデイスとスタンリー兄妹から古書の山を買ったらしいが、私にはもう関係ないことだった。
 ところが私の留守の間に、店が襲われ、ほのかに恋心を抱き始めたミス・ブライトと仲間内で評判の良くない掘り出し屋ピーターが射殺された。このときから私はバッジのない刑事に戻った!。再び襲ってきたジャッキーに、私は追いつめられたが、あのバーバラが救ってくれた。しかし、案に相違し、彼は犯人ではなかった。
 ジュデイスとスタンリー兄妹は、知識が無く分からなかったが、実は弁護士の残した蔵書には家以上の価値があったのだ。仲間の掘り出し屋のだれかが、これに眼をつけ、ボビーに買わせたが、法外な手数料を要求され殺してしまったらしい。その上この話を聞きつけ強請ったピーターまで、ミス・ブライトを巻き添えにして殺してしまったらしい。誰だ、親切そうにしながら悪事を働く奴は・・・・!

 この小説はストーリーもさることながら、作者の書籍に対する思い入れが深く感じられ、読者は知らず知らずのうちに書籍蒐集の世界に引き入れられて行くところが魅力である。クリステイは言うに及ばずウールリッチ、グラフトン、クンツ、レックス・スタウト等の初版本がこんな値を付けていることを知るだけでも楽しい。
 探偵役が元ボクサーで古書蒐集に人並みならぬ興味を持つ、というところもうまく考えたものだと思う。主人公に腕っ節で活躍させられる一方、古書についての蘊蓄を聞かせることが出来る。ところどころにちりばめられた古書がらみのユーモアも楽しい。ただ、ジャッキーについては、どうしてあのような異常な性格が形成されたのか記述があっても良いように思った。

また55ページの死刑廃止論反対の記述はうなずかせるものある。
・死刑制度には犯罪を抑止する力がないと主張する心理学者には、一寸待ってくれと言いたい。1930年代の誘拐の発生率を見るがいい。リンドバークの赤ん坊が殺された後、誘拐が死罪となって、類似の事件の発生がどれだけ減ったか、それを見てから議論してもらいたいものだ。正義が自らの重みに耐えかねてつぶれ始めたのは、法廷に心理学の専門家が出入りするようになってからだと思う。(55p)

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