死を望まれた男        ルース・レンデル


創元推理文庫  THE BEST MAN TO DIE 高田 恵子 訳

「娘が、友人に預かってくれ、と頼まれた犬を連れて、散歩に出たウエクスフォード主席警部は、川べりで男の撲殺死体を見つけた。彼はトラック運転手でチャーリーといい、金回りがひどく良いが、毒舌で結婚式で付き添い役をやることになっているジャック以外の仲間からはきらわれていた。その少し前に金持ちのファンショー夫婦が高速道路で事故を起こし、娘と夫が死亡、妻のドロシーが重傷ながら助かった。二つの事件が関係があるらしいのだが・・・。」と言う設定。
話の進行と共に、実は死んだはずのファンショーの娘は替え玉だった、チャーリーは高価な入れ歯をヴィーゴの元で作っていた、金に困っているはずのモーリスが高価な電気製品を買っているなどが明らかになり、次第に謎の確信にせまって行く。他の作品と同様、場景描写、人物描写等がすぐれており、身近な大衆の生活が良く描かれている。またこの書ではウエクスフォード一家の生活の紹介も丁寧にされている。
しかし事件全体が複雑すぎる上、あまりにも偶然が重なりすぎているという感じのする作品だ。事件の手順を追うと次のようになる。
1 妻がダウン症の子を産んだヴィーゴは、次の子が生まれるときも心配だった。妻を立派な病院に入れたが、心配する内、看護婦と関係してしまった。
2 ところが無事出産、すると結婚をせまる看護婦がじゃまになったので、殺した上、高速道路に車から突き落とした。
3 ファンショー夫婦が通りかかり、道の真ん中に死体があったものだから急カーブを切ったところ立木に当たって横転、夫は死に妻は重傷。
4 ところが同時に看護婦の死体が焼けてしまったため、顔が分からなくなり、証人がファンショーの娘と間違えた。
5 この事件全体をチャーリーが見ていて、ヴィーゴを強請った。金を巻き上げ、高価な入れ歯を作らせた。
6 ヴィーゴは追いつめられて、チャーリーを撲殺した。
7 後から通りかかったモーリスが、死体から財布を抜き取った。
・著者の観察眼のすばらしさを示す例
署の建物は、出来てからまだ六年足らずしかたっていなかったが、完成して以来、当局は・・・・次から次へと新しい趣向を加えて、自分たちの作品を絶えず改善しようとしていた。まず最初が署の前提におかれたフラワーポットで、ここに植えられている花はしょっちゅう、それを蹴散らすことでうっぷんを晴らそうとする不届き者にめちゃくちゃにされている。その次には各オフィスに観葉植物が送り込まれたが、それらのムラサキツユクサやチトセラン、ゴムノキなどは最初からひからびる運命にあり、結局のところ、鉢はタバコの灰をいれる容器になってしまった。そして昨年はガラスの置物で・・・・・(56P)