創元推理文庫 THE WHITE PRIORY MURDERS 厚木 淳 訳
H.Mことヘンリー・メリヴェール郷は甥の米国外交官ベネットを迎えて上機嫌である。ちょうどハリウッドの女優マーシャ・テートもジョン・ブーン製作モーリス・ブーン脚本による「チャールズ2世の私生活」録画の為に、米国での仕事を抜け出してきているという。しかしジョンとマーシャは怪しい関係の上、これにカニフェスト卿の娘ルイーズも絡んでいるらしい。早くも致死量にも到らないもののストリキニーネ入りの毒入りチョコレートが限られた人しか知るはずのないマーシャの室に届けられる。
ベネットはエプソム市近くにあるブーン家の「白い僧院」と呼ばれる屋敷で催されるパーテイに招待された。翌朝ベネットが屋敷を尋ねて行くとジョン・ブーンが「マーシャは死んだ。死体を見つけたところだ。」彼女は屋敷の中にある「王妃の鏡」という独立した館で鈍器で殴り殺されていた。現場には壊れた瓶、マッチの燃えがら。建物の周囲30メートルに及ぶ地面は、雪で覆われており、ついている足跡は発見者ジョン・ブーンの新しい物だけ。前夜雪は12時頃降り始め、午前2時に止んだという。ところが死亡時刻は午前3時から3時半の間。すると被害者はどうやって殺されたのか?この謎にH.Mの依頼を受けたロンドン警視庁のマスターズ警部と地元のポッター刑事が取り組む。
映画監督のレインジャーの推定は犯人はジョンである。彼は前夜カニフェスト卿に今度の映画の資金について相談に行ったが、マーシャに亭主がいることを知った卿に断られた。犬の吠え声から、戻って「王妃の館」に向かったのが1時半ころ、悪い知らせだったのでトラブルになり殺したのがそれから1時間半くらいしてから、朝まで待って後ろ向きに歩いて本館に戻った、と言うのである。
確定出来ぬうちに、ジョンが「私はカニフェストを殺した。しかしマーシャを殺してはいない。」の遺書を残して自殺する。ところが卿は生きていた。そしてここにH.Mが登場する。H.Mはマーシャの宣伝係エマリーを呼びつけ、宣伝のために毒入りチョコレートを送ったことを白状させるが、同時にエマリーは自分がマーシャの夫だったと告白する。
さらに状況証拠から犯人かも知れぬと考えられた映画監督が殺される。
H.Mは、まずマーシャはジョンを待っていたがなかなか帰ってこないためいらいらして、待ち合わせ場所の本館の「チャールズ王の部屋」に出向いて殺されたと考えた。そこへカニフェストを殺したと思っているジョンが帰ってくる。マーシャの死体を見つけて、彼はまず、カニフェストが殺された頃には、帰っていたように見せる細工をした。次に明るくなってから死体を「王妃の館」に運び、そこで殺されたように見せる細工をした後、ベネットが来たので第一発見者を装った。この二つの死のアリバイを同時に作らなければならないところが面白い。
真犯人は多情なマーシャに常々不満を持ち、今夜も密会のために「チャールズ王の部屋」で自分以外の男を待っていると知ってかっとなったのである。もちろん映画監督殺しは真相に近図かれたための防衛殺人だった。
雪の後の足跡問題、として非常に面白い作品。H.Mの心理分析もなかなか興味がある。死体に対して密室を作る動機は参考になった。
・密室崩しの解説(201P)
・死体に対して密室を作る動機=1自殺を偽装する 2超自然的殺人のように幽霊に偽装する 3偶然(202P)
(1934 28)
r991116