創元推理文庫 TO WAKE THE DEAD 橋本 福夫 訳
どんな小説でも、でだしは非常に重要だが、この作品も凝っている。南アフリカの裕福な家庭で育ったクリストファ・ケントなる青年が、友人で政治家のダンと無一文でロンドンに行けるかどうかを賭ける。しかし、着いた時にはふらふら、ロイヤル・スカーレット・ホテルで707号の者と名乗って無銭飲食、ボーイにその部屋に前客の忘れた腕輪があるからとって来てくれと頼まれて忍び込むと若い女の死体。
しかも彼女は従兄弟でダンの政治上の秘書のロドニーの妻のジェニーで旅行バックにはさまれて首を絞められ死んでいた。その上聞いてみるとロドニーも少し前にジャイルズ卿の屋敷でタオルで首を絞められて殺されていた。こちらの方の犯人は、ジャイルズ卿の屋敷の元の持ち主で、チンバで、左腕が麻痺しているリチー・ベローズ。決定的証拠はないながら逮捕収監されていた。
ジェニー殺害犯について、目撃者の証言から、七階のエレベータと階段の周りには見張っていた者がいたから犯人は七階のものらしい、ジェニー殺しもロドニー殺しも、犯人はホテルのボーイの服らしきものを着ていた、なぜかジェニー殺しのさい、犯人はホテルのタオルを15枚も使って自分を隠そうとした、ジェニーの腕輪がどうもねらわれたらしい事、などが分かる。
フェル博士は犯行の特色から体に不自由のあるものが犯人、七階には非常口と脇の小窓から目撃されずに入ることが出来る、ボーイの服に見えたのは警官の服、タオルで顔を隠したのはジェニーが犯人を良く知っていたから、腕輪はジェニーと犯人を結びつけている何か、と考えリチー・ベローズが刑務所から抜け出してきて犯行に及んだと考え、罠を仕掛ける。
実はジェニーとリチー・ベローズは結婚したが、ジェニーは夫の財産を奪って、ロドニーとロンドン行きをやったのだった。腕輪は二人の結婚の記念品だった。
・犯人はホテルの親時計の時間を変えてしまう。目的の殺人を遂行しにでかける。人に姿を見られても良いわけです。その後、自分の事務室へ帰って、あらゆる時計を正しい時間に戻しておく。(203P)
・フエル博士の事件に対する疑問(289P)
・首を絞めた後タオルを巻き、ベッドの脚の自家製ギロチンに押し込み、その後を消してしまう。(329P)
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