葬儀を終えて       アガサ・クリステイ


ハヤカワ・ミステリ文庫 AFTER THE FUNERAL 加島 祥造 訳

大富豪アパネシー家当主リチャードが急逝し、一族の者たちが集まってきた。葬儀が終わり、莫大な遺産が均等に一族の者に分け与えられる事になった。ところがその遺言公開の席で、久しぶりに姿を見せた末の妹のコーラが「あら、リチャードは殺されたのじゃないの。」ととんでもない発言。彼女は若い頃おかしな絵描き野郎とでていったのだったのだ。しかも翌日コーラは自宅で鉈で惨死体となって家政婦のギタクリストによって発見された。
遺言執行者のエンドウイッスル氏が密かに調査するが、らちがあかず、ポアロに相談に来る。ポアロが逡巡していると、コーラの絵画趣味に話題が集中する内、ギタクリストが送られてきた砒素入りケーキを食べて中毒に陥る。
ポアロは全員を今は義妹ヘレンの住むリチャード邸に集め、自由に語らせる。ところがヘレンが何かに気づき、エンドウイッスルに電話をしようとしたところを何者かに襲われる。ヘレンが何か変と感じたのは、実はコーラの首の曲げ方だった。コーラには首を曲げる癖があったがそれが争議の席では逆方向に曲げていた・・・・。修道女、ペンキの匂い、鏡の秘密、それらの連鎖を必死に考えたポアロはついに事件を解明する。

最後にポアロが一同を集めて謎解きを公開する。事件はリチャードの死、コーラの発言、コーラの殺人の順で起こったが三つの事件に実は関連性はない。コーラの発言は「コーラ殺し」を隠蔽するために行われた。つまり葬儀に現れたコーラは偽者だった。犯人はコーラに成りすますためいろいろ準備をした。首を曲げる癖は、鏡を見ながら練習したため逆方向にまねてしまった。本物のコーラはろくな絵は買わなかったが、たまたまその中に高価なヴェルメールの作品があった。犯人はそれを知り、盗んで夢の喫茶店を開業しようと考えたのだ。
ポアロの、最後には解決したと罠までかけて、一つ一つ得られた情報を集めて、事件解明のお話を作り上げて行くところが面白い。
 ・時間の不経済よ・・・・後悔するなんて。(237P)

(作品の書き方研究)

クリステイは、一般的に場面毎に章立てをしている。そこでこの作品でそれをどのように行っているかを見ようと考えた。
 全体342ページ、25章51項、あらっぽく言えば25幕51場にわかれて織り、1場あたりのページ数は6.7ページとなる。文庫版は1ページ42字20行印刷であった。従って400字つめだと少しるまるから1項あたり12ないし13枚でしあげているようだ。
この伝で行くと我々が原稿用紙300枚の小説を書こうと思えば、プロットに従って、25ないし30場の小説を考え、一場10ないし15枚程度でぶつ切りで書いて行けばよいと言うことだろうか。
章立ての分析
第1章1 リチャードの葬儀を準備するランズコム老人 5
2 遺言執行者エンドウイッスル氏(以下E氏)の出席者観察 7
第2章  食事とエンドウイッスル氏の遺産分配説明、コーラの発言 5
第3章1 列車の中で、E氏のコーラ発言への疑問 5
2 スーザン夫妻のコーラ発言批判 3
3 モードの疑問  1
4 ヘレンの何かが間違っている疑問 2
5 怪しい女(犯人)のほくそ笑み 2
第4章1 E氏にコーラ死亡の連絡  4
   2 E氏の警察訪問、聞き取りと疑問 8
3 E氏の女中ギルクリスト訪問聞き取り、絵画の話 11
第5章1 E氏、モードから電話。コーラの遺産処理  5
2 E氏、ジョージと面談、遺産について 4
3 E氏、ロザムンド夫妻と面談、遺産について 5
4 E氏、スーザン夫妻と面談、遺産について 9
第6章1 E氏、モードと面談、遺産について 9
2 E氏、テイモシーと面談、遺産について 8
第7章  E氏、ポアロに相談 15
第8章1 E氏、医者にリチャード他殺の可能性を聞く 7
  2 E氏、ランズコム老人と生前のリチャード、コーラの関係尋問 5
3 E氏、ヘレンにコーラの言葉の疑問とポアロ依頼を打ち明ける 4
第9章  スーザン、ガスリーのギルクリスト訪問と絵の話 19
第10章 スーザン、ギルクリストにリチャード、コーラの関係尋問 12
第11章1 スーザン、うめき声を聞き中毒のギルクリスト発見 5 
2 コーラの葬儀と中毒がケーキの中の砒素であること 8
    3 スーザン、モートンのギルクリスト寝台捜査 4
第12章 調査屋ゴビイ氏、ポアロに調査結果報告 13
第13章 モートン、ポアロに相談、ポアロ独自調査を宣言 8
第14章 ポアロ、ヘレンに事情聴取、協力を得ることに成功 16
第15章1 テイモシー家でのギルクリスト、ペンキの匂い、ヘレン家へ 10
2 ギルクリストの恐怖 2
第16章 ジョージ、スーザンの商売の話を聞く、ヘレン家へ 10
第17章 ロザムンド夫妻の相談 ヘレン家へ。 8
第18章 全員を集めたポアロの観察と会話の進行 14
第19章 遺贈品や遺産についての争い、ポアロの正体指摘 17
第20章1 ポアロ自分の正体を暴露 3
    2 ポアロ、寝床で考える 2
    3 ヘレン、何か変を考える 1
    4 ヘレン、考えた事をE氏に電話、襲われる。
第21章1 E氏、ポアロに連絡。ポアロE氏に指示し、テイモシー家調査依頼 9
2 ロザムンド等ヘレンの様態心配4
第22章1 ポアロ、全員を集めリチャードは病死、事件解決と罠をはる 4
  2 ギルクリスト立ち聞きを告白 4
    3 グレゴリー、自分が殺したと告白 4
4 スーザン、グレッグが精神病院に入っていたことを暴露 4
5 マイクルの告白 4
第23章1 モートンとポアロ、コーラが殺される前の日にうめき声 5
    2 ポアロとロザムンドの話、犯人はジョージでしょう。6
第24章1 ポアロ電報を受け取り、すべて解決とモートンに言う 3
    2 ポアロ一同を集める。葬儀のコーラの発言は他の事件を隠蔽するため、犯人は  コーラの偶然手にいれたヴェルメールの絵を盗ったギタクリストだ、と指摘 12
第25章 エピローグ、夢見るギタクリスト 6 

(映画と小説)

テレビでこの作品が放映された。ところが最後に出てくる価値ある絵がレンプラントの作品になっていた。大分編集しなおしているらしい。(0612)

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