新潮文庫 STONE CITY 東江 一紀 訳
ミッドウエスト大学史学教授バウマンは、偶然女の子を轢き殺してしまったために、札付きの凶暴な男どもが収監されている州刑務所に入れられてしまった。昔ボクシングをやっていた彼は、トレーニングを受けて入所するも、齢四十を超え往年の元気はない。
バウマンは、現在の妻スーザン、前妻ベスの願いに従い、囚人たちに文字を教え、ボクシングのコーチをし、司書に好みの本を購入してもらい読書に専念するなど出来るだけ波風を立てないように気をつけた。ところが熱血漢の彼は、授業料を払わなかったかたわの男に腹を立て、毛布に火をつけ、大やけどを負わせ、隔離棟に入れられることになる。そして当局から「最近刑務所ではスペンサーとメッツラーの二人が何者かによって殺害された。犯人をみつけろ。」と要請されるが、言下に断ってしまう。
刑務所にはナッシュを長とする終身刑囚クラブおよび白人同盟、パーキンスを首領とする黒い国士軍、暴走族クラブ、メキシコ人グループがあり、それぞれ仲間を抱え全体を支配しようと勢力を蓄えていた。そんななかナッシュが、二人の殺害には看守が絡んでいるかも知れないのだ、スパイをやって犯人を捜し出せ、と同じようにせまってくる。一度ははねつけるが、息子を威されて、引き受けざるを得なくなる。
隔離棟をだされてネリス夫婦(ホモ)等の歓迎を受けた後、調査開始。ナッシュのおかげで思惑はそれぞれあるものの各派の協力体制は取り付けられていた。おかまのカズンズが刑務所街で起こった殺人事件の真相暴露を怖れて犯した殺人と主張したり、借金が原因ではないかと考えて売店で出費の多くなった男を調べたりするが、容疑は皆晴れる。カズンズの父はメッツラーで、彼は一緒に捜査をするようになる。
捜査をする内に刑務所同志で行われるボクシングの試合に多くの掛け金が動いており、殺されたスペンサーの息子でボクサーのクラレンスが何者かに八百長をやれと言われていたことを突き止める。そんなことが出来る人物と言うことで賭の集金人たち、白人同盟の二人の副会長、さらにはナッシュと殺されたメッツラーに的を絞るが、ボクシング選手は試合が始まったら止まらない様子で八百長は出来ないらしい。
そしてバウマンの自室に「これ以上手を出すな。」の落書き、賊が部屋にどのようにして出入りしたのか研究し、主任電気技師のレズノヴィッチが浮かぶが、時既に遅く彼は心臓発作で死んでしまう。
壁に突き当たるが、「殺された者の共通点はどれも無実の罪で入ってきたものらしい。」と分かる。そのときふと犯人に思い当たったらしいカズンズが、走り出しバウマンは後を追う。犯人に遭遇し、カズンズは殺された者の、死闘を演じついに倒すが・・・。
犯人の最後の考え方が面白い。「殺された奴はどいつも州刑に入る資格などもっていなかった。おれは無実の罪で入ってきた上げ底野郎と、おんなし屋根の下にいるのは、まっぴらだってことよ。」必死に死体を隠したおかげで、犯人とバウマン、カズンズは脱獄を試み、バウマンのみが残った、と言うことになった。バウマンは英雄になったが、これでは当分刑務所を出られそうにない。それでは腰をすえてと娑婆にもお別れの挨拶を書いたが、刑務所は頭のおかしな連中のたまり場、突然殺人犯が彼を襲う。
全編腐った野菜とアンモニアと糞の匂いがぷんぷんするような、硬質な刑務所ストーリーである。女っ気は気持ちの悪いホモの男だけ。そこでは人々の心はすさみ、看守を取り込んだ人種間のなわばり争い、金やセックスに絡む争い、が日常化している。よほどの神経を持って読まないと途中で嫌気がさし、投げ出してしまいそうな作品だ。「あなたは、この小説を読み通せるほどタフですか。」とオビにあるそうだがうなづける。主人公の突然の死で終わるという通常の小説ではまれなエンデイングも救いがたい。
しかし刑務所は人間の本姓がより赤裸々にあらわれるが故に、社会や人間関係の縮図が見られる事も事実である。そのような意味で非常に興味のある書と捕らえることが出来る。ただ犯人の犯行理由、元大学教授ともあろう主人公がああ、簡単に激する理由等が異常社会と言ってしまえばそれまでだが、常人には理解しがたいのもまた事実である。
・ベトナム帰還兵の罵倒・・・だらしない連中だ。アジアのちびどもに、いいようにあしらわれたうえに、帰還してからこっち、愚痴ばかりこぼしてやがる。(上91p)
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