創元推理文庫 THE CASK 大久保 康雄 訳
ロンドンの波止場に到着した葡萄酒の樽、そのうちの一つが陸揚げ中に破損した。樽の形が他のものと変わっていたことから、中を調べると金貨とおがくずと女の死体が出てきた。
驚いた船会社が、ロンドン警視庁バーンリー警部と連絡を取るが、その間に受取人のフェリックスが荷物をだまし取ってしまう。荷物は、再度行方不明になるが、発見され、フェリックスは、「フランスの仲間ル・ゴーチエと富くじを買ったが、それが大当たり、得た金貨を送るとの連絡を受けた。樽の中身がその金貨である」と主張。死体が一緒、しかもそれが一度は結婚を誓ったアネットと知って仰天。
警部等が、フランスに渡って調べると「製造元のデユピエール商会は群像をおくった。ル・ゴーチエは富くじの話は知らぬ。」とのこと。
そのうちにル・ゴーチエの仲間のポワラックが出頭し、死体が妻のアネットであることを確認。荷物の輸送ルートをおうと、別に少し前に届いた樽、あるいは逆にロンドンからパリに届いた樽などが判明する。さらにポワラックの家を調べると樽の跡と別の群像の人形があり、デユピエール商会に送り返されたことも分かった。
犯人はポワラック、フェリックスに絞られるが、ポワラックは樽が移動する頃、ベルギーに行っていたと主張し、フェリックスがいくつかの物的証拠が出てきて逮捕される。
後半はフェリックスの雇ったクリフォード弁護士や私立探偵ラ・トウーシュの活躍。結局、ロンドンでポワラックが、樽の移動を密かに馬方に頼んだこと、ポワラックが偽の手紙をうったタイプが見つかったこと、レストランのボーイの証言が誤りだったこと等が確認される。その結果、ポワラックはベルギーでなくロンドンに行っていたことが証明され、真犯人と分かる。しかし、発覚したとわかったボワラックは最後の抵抗を試みる。
二つの樽の動きは
(1)パリ(フェリックス名の偽の注文でデユピエール商会、群像)・・・ロンドン(ポワラックが受け取る。ロンドン市内移動)・・・群像を捨て、パリに送り返す・・・デユピエール商会
(2)デユピエール商会(ポワラックの注文、群像)・・・ポワラック自宅・・・アネット絞殺、死体と金貨を詰める。・・・ロンドンへ送る。
歴史に残る名作だが、樽の動きはともかく、ボワラックが犯人と決まるあたりは通俗的。いくつかの書物に批評が載っているが
「推理小説を科学する」
・4つの樽が2つであるというトリックはよく考えられている。
・ボワロックは偽筆の名人すぎる。犯罪にひどくくせのあるタイプをつかっているのはおかしい。
・かんじんのアリバイ・トリックはいいかげん
「ミステリーの泣きどころ」
・二つの樽の樽板の傷が同じはできすぎ。
・死体の入った樽は重たいはずなのにロンドンで馬車屋一人に運ばせている。
・フェリックスが死体を見たときの驚きようが極端すぎる。
・10日間も樽づめ死体が移動しているのに死臭のことが書いてない。
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