ハヤカワ・ミステリ文庫 SPARKLING CYANIDE 中村 能三 訳
「三幕の殺人」(筋立ても似ているように思う)などと同様の毒殺物。
ルクセンブルグというレストランで、富豪で魅力的な女性ローズマリーの誕生記念パーテイが開かれた。出席者は影の薄い亭主のジョージ、いつも姉にさきを越されている妹のアイリス、ならず者の息子の無心ヴィクターに頭を悩ます叔母のルシーラ、有能な秘書で密かにジョージを愛するルース、ローズマリーとの仲を取りざたされる野心家政治家のステイーブン、ローズマリーに嫉妬する妻のアレクサンドラ、そしてローズマリーの友人アンソニーの7人である。ライトが暗くなり、ステージがせり上がると、フロアショーが始まり、皆ダンスに興じた。しかし再び明るくなって席に戻ったとき、ローズマリーが倒れ死んでいた。
自殺として処理され、1年が過ぎようとしたが、ジョージは疑惑を拭いきれなかった。そこで万霊節の晩、おなじ場所、同じメンバーでパーテイを催す。ローズマリーの席を空けておき、ショーが終わった後、そこにはローズマリーのそっくりさんが坐っている予定だった。
しかしそっくりさんはあらわれず、変わりにジョージが倒れた。青酸中毒だ。
この事件をロンドン警視庁のケンプ主任警部等が追求する。人間関係はどうか、どのように毒を入れたのかを解き明かしつつ、物語は進んで行く。最後にはアイリスがねらわれる。
私は、ステイーブンがいったんは恋したローズマリーを殺した、後は強請ってきたジョージを殺したと考えた。もちろん妻の共犯の可能性も考えた。また別解としてアイリスの犯行も考えられると思ったがみなはずれた。ルースの援助を受け、給仕にばけたヴィクターの犯行で、ローズマリーとアイリスを殺して財産を盗ろうとした物。ジョージ殺人は本来アイリスをねらったが、ダンスから戻ったとき、席が移動し、ジョージがアイリスの物を間違えて飲んだのだった。
プロットは比較的平凡だが、ローズマリーに対する見方を記述した第一章は面白いと思った。彼女の悪気はないのだが、不自由なく育ったために相手に対する配慮が全く見られない様子が浮き彫りになっている。タイトルは「きらめくシアン化合物」とでも訳すべきすじのもの。また作者は青酸と青酸カリを混同しているようにもみえた。(155P)
・成功した人間というのは、たいてい不幸なものだよ。・・・・そう言う連中は、何か世の中が認めてくれるようなことを成し遂げることで、自分自身を納得させないではいられないんだ。・・・・幸せな人間というのは、失敗した連中のことなんだ。連中は、別に気にかけないって事で、自分自身とうまくやっていけるからね。(146P)
・そう言うケースが沢山あるんです。疑問符つきの自殺がね。(196P)
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