幽霊射手           デイクスン・カー


創元推理文庫 THE DOOR TO DOOM & OTHER DETECTIONS 宇野 利泰訳

グリーンのデイクスン・カー論が大変面白い。短編集だが、カーのトリック好みが良くあらわれた作品が多い。

奇跡を作り出した男(ダグラス・G・グリーン)
・アンリ・パンコラン、ギデオン・フエル博士、ヘンリー・メリヴェール卿、マーチ大佐
・言語の絶した恐怖感と、抱腹絶倒の芝居を同居させている(8P)
・「夜歩く」の一遍は、推理小説における強固なプロット後世の教科書に適当な作品といえるであろう(18P)
・煙草の灰と窓枠の指紋を問題にしたところで、おもしろおかしくもない末梢的な証拠を二つ加えるだけのことではないか(19P)
・思い違いをしてくれては困るぜ、ワシはワシの信念を、警察の連中に打ち明ける気持ちなど、全然抱いておらぬのだ(29P)

死者を飲むかのように
 チェザレ・ボルジアと教皇は互いに瓶のワインを飲むが二人とも毒殺される。しかし用意した若者が、それを飲んで見せるが何でもない。実は把手がスプリングの役をつとめ、圧力がかかると針が飛び出す仕掛け、知っていれば何でもないのだが・・・。

山羊の影
 シリル・マートンの晩餐会にはジョン卿、マートンを憎むビリー、婚約者のマドリンが出席、その席でビリーがマートン自慢の消失術をインチキときめつけた。マートンは客と大金を賭けた上、実際に消失してみせると言いだし、地下にある石の部屋に入った。ところが銃声の音で駆けつけるとマートンはいない。これが十時だが、十二時に三十マイル先の館でビリーの叔父で資産家のフラニョオが刺殺された。さらにビリーに夜半襲いかかった者がいた。
パンコランは「殺された男が犯人のアリバイを証明している唯一の事件」という。
賭金を取るために、ビリーはマートンに二人で消失事件を持ちかけた。まずマートンに変装した、ビリーが地下室に入る。ビリーが空砲を撃ち、皆が駆けつけてくると、ビリーの姿で外に出てフラニョオ暗殺に向かう。その間、マートンはビリーの役を演じている。その後二人は落ち合うが、このときビリーはマートンを刺殺、死体を堀に捨てた。そのときに怪我をしたが、部屋に戻り、マートンとの格闘劇を一人ででっち上げた。

第四の容疑者
 諜報活動を行っているオライアダンが帰国すると、妻のサン・マリーが、ラ・ガルトの元へ行ったという。ラ・ガルトは、当局が眼をつけているx国スパイ。ややあってジョン卿がオライアダンと駆けつけると、ラ・ガルトが射殺されていた。直前にサン・マリーはラ・ガルト宅を出ていた。そして庭にはサン・マリーの非をならす女中のセレストがいた。犯人はサン・マリーかセレストか、実は銃は二発撃たれていて、最初のものは道徳的非をならす女中、あとの一発はサン・マリーを撃たれたと勘違いしたオライアダンの消音銃。

正義の果て
 ロージャー・ダーワースは、今宵、自分を従兄のフェローズが襲いに来ると宣言。三人に監視を頼み自室に入る。そして夜半それらしき訪問者、あらそう音が聞こえ、駆けつけるとダーワースの死体。フェローズが逮捕され、絞首刑に処せられることになった。しかし、パンコランは不治の病を宣告されたダーワースが、遺産を憎いフェローズに譲ることを避けようと考え、自殺を他殺に見せるようとしたと見破る。

四号車室の殺人
 ドーヴァー海峡を渡り、デイエップからパリに向かう夜汽車の中で、宝石密輸団のメルシエが絞殺されていた。車掌は廊下を通った者はいないという。実は車掌とメルシエは一味で、車掌がダイヤの独占を狙って列車が停車中に窓の外から絞め殺した・・・。

B13号船室(以後はラジオドラマで芝居形式になっている)
 アンは結婚したリチャードとともに大金を持って、欧州航路船に乗り込むが、リチャードが消え、彼らが入ったB13号室も実在しないと分かって大慌て。実はリチャードはアンの金を奪おうと彼女に近づき、結婚、欧州航路で消してしまおうと考えていた。

絞首人は待ってくれない
 気がついたときには銃を持っており、婚約者を射殺した容疑で娘は死刑の執行を受ける直前。フエル博士が登場する。駆けつけた婚約者の弟は同情してみせるが、博士は彼が兄と同じ背格好をしていることに眼をつけ、証拠品のチョッキと上着を着せてみせる。そして彼の証言に従いホールドアップさせたところ、チョッキがずり上がって両方に間銃の穴は十センチもずれていた・・・。

幽霊射手
 その孤島の屋敷では時折中世の騎士の像が矢を放つという。そして所有者のレデイ・ドルーが確認に向かうと、一瞬電気が消え、彼女の胸には矢が刺さっていた。しばらくして甥のクリスと顧問弁護士のノーマンが調査。城の管理者バラード教授は犯人がヒューズ・ボックスの紐を引いて、停電を起こし、暗い中で矢を被害者に突き立てて刺殺したとする。ぎゃあぎゃあわめくオウムの存在が非常に面白い。

花嫁消失
 崖の上のバルコニーから、ジョセフィーヌという女性が行方不明になった。周囲に言わせると彼女とそっくりのルーシーが、恐怖の影に脅かされた後行方不明に。しかし夫のトムは、となりのカウボーイが、ジョセフィーヌ投げ縄でひっかけ、墜落させたが死体は潮流の関係で洞窟に流れていったと推定、ルーシーを危機一髪で救う。

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