悪の起源    エラリー・クイーン

ハヤカワ・ミステリ文庫 THE ORIGIN OF EVIL 青田 勝 訳

 Cは死んだはずだが、実は生きていて彼を殺したAとBに復讐を誓った。ついに二人を見つけだし、Aの召使いになって潜り込むと、なんとAはCが現れたことにしてBを殺し、自分も脅かされているふりをすることを計画した。そこでCはAにBを殺させ、最後は自然にばらしてAを窮地に陥れようと言うプロット。

 突然飛び込んできた娘ローレル・ヒルの「お父さんは犬の死体に殺されたのよ。」に、犯罪研究家エラリーは興味をそそられた。娘の話によると死んだのは、宝石商のリアンダー・ヒルで、犬の死体と共に送られた手紙をみて、心臓発作に襲われた、と言うのだ。ヒルは共同経営者のロージャー・プライムが下半身不随のため、実質的にと宝石卸商を経営していた。プライムはひどい頑固者に見え、エラリーが事件に容喙するのをいやがっている風だった。また秘書兼召使いのウオレスは、自分の身元を明かさない一方でプライムが、大変な権力主義者で支配欲、征服欲が強いことを告げる。
 ローレルやプライム夫人の孫のターザン男ことマックの協力を得て、手紙のうつしが発見された。「お前たちは私が死んだと思っているが、生きている。復讐を夢見た月日の代償におまえたちの心と肉体の死による償いをする!」プライムには犬の死体と共にボール箱が送られてきていた。その上、食べたまぐろに殺鼠剤が入っており、危うく死にかけた。その1週間後、ベッドに大量の死んだ雨蛙がばらまかれ、失神した。またボール箱が送られてきて、中からは鰐皮の財布が出てきた。お次は、鳥を象徴する本の焼けくず、猫と犬を表す役にたたない株券・・・・。
 ヒルとプライムの過去を洗っていたエラリーがプライムに言う。「私は1927年より前、あなたとヒルと生活を共にした人間が、チャールズ・アダムであることを知っている。彼があなた達を殺そうとたくらんでいる人物だ。最初の箱に入っていたのはヤツメウナギですね!並べると最下等動物、魚類(まぐろ)、両棲類、爬虫類、鳥、ほ乳類・・・ダーウインの進化論にもとずいて送られたものです。そして最初の死骸の犬の種類はビーグル犬!・・・ダーウインの乗った船であり、アダムの作った船の名です。その船で秘宝調査に出かけ、めでたく宝石を発見し後、彼を置き去りにし、宝石を奪ったのです。そうしてあなたは今の生活の基礎を築いたのです。しかし今度の贈り物は皆死んでいることも共通しています。次に死ぬのはあなたです。」
 しかし、その夜プライムは、忍び込んできたウオレスを射殺。「この男がアダムだ。」とエラリーに宣言する。しかしエラリーは、最初に送られた脅迫状にTが使われていないこと、タイプライターが壊れていたのだろうと言うこと、それを持っていたのは・・・・ともう一つの真実を暴露する!そして死んだはずのウオレスが立ち上がる!

 国名シリーズ等を終えた後、作者はライツヴィルを舞台にした作品とに続き、ハリウッドを舞台とした作品を書いているがその第一作。なんとなくユーモアがあふれ、コメデイタッチの作品である。エラリーが、「ブラックダリア事件」解決のため、市長の極秘の要請によって大ロサンゼルス市の浄化運動に関する特別調査官に任ぜられ、赴任したという前提になっている。ブラックダリア事件については註ででアラン・バーナードの「売春婦殺し」という作品に引用されているとあるが、ジェームス・エルロイの「ブラック・ダリア」でも主題になっている。
(1951 46)
r991101