罰金

罰金       デイック・フランシス

ハヤカワ・ミステリ文庫   FORFEIT   菊池 光 訳

この人の作品は5作目だが、全体として次のように感じる。
(1)常に主人公の体験という形を取っており、書き方に無理がない。
(2)この作品では主人公の妻のエリザベスだが、ほかの作品では片腕の利かないシド・ハーレーが主人公になるなど、身障者が作品で重要な位置を占めているケースが多い。そのせいか、人間らしさがよく現れている。
(3)作者は競馬業界に通暁しており、その中での実際にありそうな事件を取り上げているため、トリックに作為性を感じない。

この作品は競馬新聞記者ジェイムス・タイローンが主役、ある日同僚のバートが
「記事を金にするな、絶対に自分の魂を売るな。」
の言葉を残して、ビルの7階から転落死した。
最初真意が分からなかったが、調べてみると最近バートが買い薦めた馬が、いずれもレース直前になって出走を取り消していることがわかった。
不正行為がかんでる!
かけ屋が、バートと組んで特定の馬の人気をあおり、直前に取り消し、かけ屋はそれまで払い込まれた金をまるもうけ、と言う分けだ。
次のレースに人気をあおったテイドリイ・ボムをださない分けには行かない。
しかしかけ屋はそれを妨害しようと次々に工作を始める。
チャーリー・ボストンはボクサーくずれを使ってタイローンを襲った。
馬を隠したが、その親玉のヴォエルステロッドはタイローンの浮気の現場の写真を示して、馬のありかを知ろうとする。
走らせないようにする気だ。
そしてエリザベスを挟んでタイローンと悪漢の最後の対決・・・・・。

この活劇の一方で、寝たきりのエリザベスが「あの人に悪い」と感じながら、それでもタイローンを独占したいと思い、タイローンは良心の呵責を感じながらゲイルとの情事におぼれてゆく・・・
そしてそれが暴露されたときの両者の行動、考え方の記述が共感を呼ぶ。